
2025年11月、嘉悦大学にて、「企業の描く未来を知ろう~統合報告書を読んでみよう~」というテーマで、授業を担当させていただきました。
この授業は、嘉悦大学から中小企業家同友会(三多摩支部)にご依頼をいただいたもので、担当する4社のうちの1社として、株式会社シェダルが登壇の機会をいただきました。
100分の授業の前半は、シェダルの自社紹介と、サステナビリティ推進事業についての説明。そして後半、「統合報告書」をテーマにワークショップ形式の講義をさせていただきました。
参加型の講義で、学生の皆様にも積極的に取り組んでいただきました。

「大学生」と「統合報告書」
大学生と統合報告書って、一見すると、あまり接点がないように思えるかもしれません。
「どうせ堅苦しい数字の話でしょ?」「就活には関係なさそう」そんな声が聞こえてきそうです。
ですが、本当にそうでしょうか?
いま、Z世代と呼ばれる学生さんたちは、企業の社会的な姿勢やサステナビリティへの取り組みに、私たち大人が思う以上に高い関心を持っています。
今回の授業では、学生さんそれぞれに、「気になる企業」の統合報告書を読んでもらいました。
そこで飛び出した「リアルな感想」とは、どんなものだったのでしょうか?


企業の描く未来を知ろう~統合報告書を読んでみよう~
授業の目的は、「企業を知る」という視点を、一歩深めること。
企業の採用ページだけでなく、「企業がどんな未来を描いているのか?」、「社会や社員にどんな約束をしているのか?」を知る方法のひとつとして、統合報告書を活用してほしいという願いがありました。
| 項目 | 内容 |
| タイトル | 企業の描く未来を知ろう ~統合報告書を読んでみよう~ |
| 開催日時 | 2025年11月7日(金) 13時10分~14時50分(100分) |
| 講師 | 株式会社シェダル 代表取締役 福田多美子 |
| 参加人数 | 約20名(大学生)+オンライン |
| 場所 | 嘉悦大学(東京都小平市) |
| 内容 | 1:株式会社シェダルの紹介とサステナビリティ 2:企業の描く未来を知ろう ~統合報告書を読んでみよう~ (ミニワーク) 3:質疑応答 |


統合報告書とは?就活サイトでは見えない企業の「本音」
まず、授業では「そもそも統合報告書って何?」という説明からスタートしました。
統合報告書は、決算書のように、売上や利益といった「財務情報」だけが載っているものではありません。
- 企業がどんな未来を目指しているのか(ビジョン、パーパス)
- 社会課題の解決にどう貢献するのか(サステナビリティ)
- 社員をどう大切にし、育てようとしているのか(人的資本)
- そのために、どんな戦略で価値を生み出すのか(価値創造ストーリー)
こうした「非財務情報」がぎっしりと詰まった、まさに企業の「羅針盤」であり、未来の設計図です。
就活情報サイトや採用ページだけでは見えにくい、企業の「本音」や「素顔」が、統合報告書には描かれているのです。
「楽しく働きたい」「仕事と生活を両立させたい」といった学生さんたちの希望に、統合報告書はとても有効な手がかりになります。


「おもしろい!」「未来が見えた」大学生のリアルな声
ミニワークでは、「自分が気になる企業、好きな製品を作っている企業、いま、机の上にある飲み物やペンなどのメーカーでもいいよ」と伝え、企業のWebサイトから、統合報告書を探して読んでもらいました。


最初は「え、どこを見ればいいの?」と戸惑っていた学生さんたちに、基本は、「どこから読んでもOK!」「読みたいところ、気になる項目から読んでください」と伝えた後で、読み方のポイントを解説していきました。
はじめて統合報告書を読む際は、以下の6項目に注目して読んでみましょう。
1)冒頭3ページ
2)トップメッセージ
3)価値創造ストーリー
4)事業概要
5)財務情報
6)非財務情報
上記それぞれの①重要性、②そこから何を読み取れるのか ③どう読めばいいのか ④ワンポイント解説 を行うと、学生さんたちは真剣に統合報告書を読み、気づいたことをメモしてくれました。

最後は、4人で1チームになって、それぞれの気づきをシェアし、感想や意見を言い合う時間を取りました。
最初は「最近の学生は控えめなのかな?」と思っていましたが、シェアの時間が始まると印象は一変。
堂々とした発表、率直な意見や質問も出て、笑いも交えながら、とても活発なディスカッションになりました。
そして多くの学生が、統合報告書を「ネットやCM、手に取った商品だけではわからない、企業の考え方や未来像まで掴める資料」だと実感してくれたように思います。
就職活動で、企業を見る際のひとつの資料としても、統合報告書が、学生の間でももっと身近になると良いなと感じました。
初めて統合報告書を読んだ、学生さんたちの素直な感想
今回の授業で印象的だったのは、学生たちの素直な感想でした。
統合報告書は、学生にとって「企業を見る目」を育てる素晴らしい教材にもなりえるものだと確信しました。
以下、たくさんの感想の抜粋です。好きな企業だから、好きな製品があるから、就職したいから、アルバイトをしているからなど、いろんな理由で企業を選び、統合報告書を読み解いてくれました。

統合報告書:トヨタ自動車株式会社
感想:
・車は排気ガスなどが出てしまうため環境にはあまりよくないが、車を売っている会社も、その課題にしっかり取り組んでいるんだと感じた。
・車をただ売るのではなく、車によって、人々や世界の暮しを支える「移動」を、もっと楽しく、もっと豊かにしたいという理念があるのだとわかった。
・トヨタは、価値創造とストーリーという項目を作るほど、自社の車の価値を大切にしているんだと感じた。

統合報告書:富士通
感想:
・サステナビリティと、デジタル技術による社会課題解決への姿勢が明確に示されており、企業としての責任と未来志向を強く感じた。
・経営戦略と社会価値創出のつながりがわかりやすく、信頼性の高い内容だった。

統合報告書:サントリー
感想:
・パーパスや価値観が明確で、社会価値と企業価値を両立しようとしている姿勢が見えた。
・目標や実績がしっかり記載されている点もよかった。

統合報告書:無印良品
感想:
・サステナビリティへの取組みの強化に、魅力を感じた。
・再生素材の活用、ロス削減を目的とした商品開発に共感した。
・無印良品はシンプルさと品質を追求し続けてるブランドだと思うので、サステナビリティや社会貢献にも積極的に取り組んでる点が印象的でした。
・ストーリーに惹かれた。

統合報告書:本田技研工業(HONDA)
感想:
・冒頭3ページに 車やバイクの写真とともに「あなたの夢の原動力はなんだ?」という質問からはじまっているのがかっこいい。
・トップメッセージは、「夢」という言葉が多く使われている。
・価値創造プロセスのイラストがエンジンの仕組み風にかかれていて、自動車メーカーらしい。

統合報告書:キリンホールディングス
感想:
・日々の仕事はすべてくらしにつながっていると、従業員一人一人が信念をもって挑戦を繰り返していくことで、進化していくと書いてあり、挑戦を繰り返すことが進化へつながると共感した。

統合報告書:コカコーラ
感想:
・全ての人にハッピーなひとときを 価値の創造 この言葉は人々に大きな影響を与えたいという思いが伝わってきて共感できました。
・「ハッピーなひとときを、ボトルから。」安心、安全な1本をつくり続けたいという文章が、すごく思いを込めた文だと思った

統合報告書:ナイキ
感想:
・ナイキは、環境問題を重要にしているなと思いました。
・環境にいい素材を使い、長持ちさせるようにしている。

統合報告書:イトーキ
感想:
・サステナビリティ経営の中で、人を中心とした働き方改革を重視している点がすごいと思った。

統合報告書:トヨタ自動車
感想:
・トヨタの統合報告書を読むと、単なる製造業ではなく、「人と社会の幸せをつくる企業」へ進化していると感じられた。

統合報告書:富士通
感想:
・富士通の事業内容は、まず重要課題に地球問題の解決とあり、SDGsの様々な問題を解決するために向かっている事が分かった。

統合報告書:エイベックス
感想:
・最初は、固苦しいものかと思っていたが、カラーで見やすく、読んでみたいところもあった。

統合報告書:伊藤忠商事株式会社
感想:
・「三方よし」という昔から持ち続けている信条を、今も持っていて良いと思った。

統合報告書:ブリヂストン
感想:
「変化をチャンスへ」「守り」と「攻め」で「質を伴った成長」への道筋を切り拓くという言葉がいいと思った。

統合報告書:サントリー
感想:
・課題などが書いてなり、とてもおもしろいなと思った。
・目標や実績が具体的な数字で書いてあり、とてもわかりやすいなと思った。
・企業の戦略が書いてあるので、とても勉強になる。
学生ならではの視点で、企業の「全体像」や「未来への戦略」、そして「働くことの意義」まで、多くの「気づき」を得てくれました。
・CMや製品だけではわからない「企業の姿勢」が見える
・共感できる「理念」や「価値観」に出会える
・「働く」ことへのインスピレーションと「学び」がある
学生たちの感想から見えてきたのは、彼らが統合報告書を「難しいIR資料」としてではなく、「企業の素顔や未来を知るためのストーリーブック」として読み解いている姿でした。
就職活動の企業研究はもちろん、自分がひとりの消費者として、あるいは未来を担う一員として、どの企業を「応援」したいか。統合報告書は、その判断材料にもなります。
ぜひ、多くの学生、そして社会人にも、統合報告書を、「未来の教科書」として、手に取ってみてほしいと思います。
嘉悦大学での授業のレポートは、以上です。
みなさんの学校や会社でも、統合報告書を読む勉強会を実施してみませんか?
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