そもそも「統合報告書」ってなに? なぜ注目が高まっているの?

ふくろう先生

「取引先のことをもっと深く知りたい」 「就職・転職で、将来性のある会社を選びたい」 「投資先として、ほんとうに成長する企業を見極めたい」と思ったとき、あなたは、何を見るかな?

大学生

私は就活中の学生ですが、最初に、企業のホームページを見ました。

ふくろう先生

ホームページを見るのは大切なことじゃ。また売上げや利益などを見たいときは、「決算書」も役に立つ。
ただし、「その会社がこれからどうなりたいのか」という「未来の姿」までは見えてこないことが多いんじゃ。

営業

きれいごとや結果だけではなく、企業のリアルな実態や、未来の姿(将来性)もまるっと知りたいなって、思っていたところでした。

「統合報告書」ってなに? なにを「統合」しているの?

「統合報告書というからには、なにかとなにかを統合しているということ?」 そんな疑問がわきますよね?

そのとおり。統合報告書とは、「財務情報(数字)」と「非財務情報(ストーリー)」をひとつにまとめた(統合した)レポートのことなんです。

財務情報(数字)売上、利益、資産など、企業の「過去の実績」を示すもの
非財務情報(ストーリー)経営理念、環境への取り組み、人材育成、技術力など、「数字には表れにくい企業の価値」を示すもの

これまでは、企業の業績を見たいときは「決算短信」、「決算説明資料」、「有価証券報告書」、ネット情報、書籍などで確認。

社会的な活動を知りたいときは、「CSRレポート」や「サステナビリティレポート」で確認するのが一般的でした。

しかし、これらを別々に読んでも「なぜその売上が上がったのか?」「その利益を使って、これからどう成長しようとしているのか?」というつながりは、なかなか見えてきません。

統合報告書は、この「数字」と「ストーリー」を統合し、企業の活動全体をひとつながりで伝える資料なのです。

なぜ今、「統合報告書」が注目されているの?

「統合報告書なんて聞いたことがない」という方もいるかもしれませんね。

しかし今、「統合報告書」には大きな注目が集まっています。

日本国内での統合報告書の発行企業数は、この10年間で約10倍に急増しました。 以前は一部の大企業だけが発行していましたが、今では上場企業のスタンダードになりつつあります。

背景にあるのは、社会の変化です。

現代においては、企業は単に儲かっていれば良いわけではなく、環境・社会・ガバナンス(ESG)といった「非財務情報」を積極的に開示する責任が求められています。

また、グローバルに見ても、世界の主要企業の多くがこの「財務と非財務を統合して報告する」スタイルを採用しており、統合報告書は企業情報を知るための「世界標準(共通言語)」となりつつあるのです。

出典:経済産業省「日本の企業情報開示の特徴と課題」(2024年5月)   

他の資料とはココが違う! 「統合報告書の3つの特徴」とは?

統合報告書には、他の資料にはない大きな特徴が3つあります

1)数字とストーリーが統合されている

単に「売上が◯◯億円でした」という結果だけでなく、「なぜその結果になったのか」「どのような価値観でビジネスをしているのか」という背景やストーリーが語られています 。

2)企業の「これから」が見える

多くの統合報告書には「価値創造ストーリー」というパートがあり、企業が描く未来のビジョンや、中長期的な戦略が明確に示されています 。過去の記録である決算書とは異なり、統合報告書は「未来」を語るレポートなのです 。

3)情報が1冊にまとまっている

経営戦略、財務、環境活動、人材戦略など、これまでバラバラの資料に散らばっていた情報が、一冊に再編集されています 。あちこち探さなくても、まずは統合報告書を開けば、その企業の全体像をサクッと手に入れることができるのです 。

営業

「統合報告書」を読むと、ホームページや先輩インタビューだけではわからない、「会社の未来」についてを知ることができるんですね。

ふくろう先生

その通り!就活中に統合報告書を読んでいる学生は、まだまだ少ないのが現状じゃ。面接のときに、統合報告書について語り合ってみたらどうじゃ(笑)