*本記事は、2020年10月に株式会社グリーゼで公開したものを、2024年10月に一部修正を加えて公開しなおしたものです

こんにちは。株式会社グリーゼ(現シェダル)の福田多美子です。

2020年9月19日に、グリーゼ(現シェダル)で5冊目となる書籍「世界一やさしい Webライティングの教科書 1年生」(ソーテック社)が発売となりました。

毎回、たくさんの方に購入、シェア、レビューなどの応援をいただいて、感謝の気持ちでいっぱいです。

「5冊」を節目に、出版について整理をしておこうと思います。

・出版って、ビジネス的なメリットはあるの?
・出版に興味があるけど、どうしたらいいの?

と思っている方の参考になればと考えています。

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1:ビジネス書を出版するメリットとは
2:切り口が大事!どんな本を作るのか
3:編集者に届け!企画書の書き方
4:出版社に企画書を持ち込む2つのアプローチ
5:目指せ重版出来、1万部への道
6:まとめ


1:ビジネス書、出版のメリットとは?

出版には、大きく分けて、自費出版と商業出版があります。自費出版は、業者に費用を支払えば、誰でも自分の好きなテーマで出版することができます。一方、商業出版は、製本、印刷などの出版費用、書店に本を並べるなどの流通費用、宣伝費用なども含めて、本を書く以外の費用はすべてを出版社の方で負担してくれます。著者は原稿を書き、販売部数に応じて印税をいただく形になります。

グリーゼ(現シェダル)の場合は、5冊とも商業出版です。ここでは、商業出版のメリットを説明します。

■ブランディングにつながる

弊社の場合、最初から、出版の目的は「ブランディングのため」と決めていました。こんなにもデジタル化が進んでいる今でさえ、紙メディア、特に本に対する信頼度は高いものです。本を出すことが、知名度アップ、信頼度アップにつながれば・・・という期待があり、出版への準備を進めた経緯があります。

実際に、営業で訪問した企業様で「〇〇の本の会社さんですね」と声をかけていただくこともありますし、自ら購入した弊社の本を持参して商談に来てくれる方もいらっしゃいました。どれも大ヒットした本ではありませんが、多少は知名度アップ、ブランディングに貢献しているのではないかと思います。

またお客様からすると「ライティングの本を出しているグリーゼ(現シェダル)さん」「SEOの知見のある福田さん」という見方をしてくれますので、営業やコンサルティングがやりやすくなるというメリットも感じます。


■経験、知見を体系的に整理できる

弊社の社員は、ほぼ全員がライター経験のあるスタッフです。さらに全国のライターをネットワークし、BtoC、BtoB、さまざまな業種のライティングに携わってきました。多くの経験、知見がバラバラに蓄積されてしまっていることが課題だったこともあり、出版は、よい機会になりました。ライティングに関する知見を集約して、体系的に整えることができました。

他にもいいことはいろいろとありましたが、ビジネス面でのメリットとしてまとめると、上記の2点になります。「さあ、みなさんも出版しましょう」と言いたいところですが、どんな本でも出版できるかというと、そんなことはありません。売れる本、売れる可能性のある本でなければ、出版社がYESと言ってくれません。

では、どんな本を企画すればよいのでしょうか?


2:切り口が大事!どんな本を作るのか?

これまでに5冊の本を出させていただきましたが、最初の1冊を出すまでには苦しい時期がありました。

もともとテクニカルライターとして、IT企業のマニュアル開発を行っていた私は、テクニカルライティングの本なら書ける!という、今思うと恥ずかしいくらい安易な気持ちで、出版へのチャレンジをスタートしてしまったのです。

「わかりやすい文の書き方などをまとめた『文章術』の本を企画しよう」と考え、出版企画書を作り、ある方の紹介を受けて、出版社へ企画書を持っていくと・・・

忙しい編集者の方が、わざわざ時間を取ってくださったのですが、そこで言われたことは「なぜ、今ごろ文章術?」「なぜ、福田さん?」「誰がこの本を読みたいと思うのでしょう」という厳しい指摘でした。

既に世の中には「文章術」の本がたくさん出版されていて、権威のある先生たちの本も多かったのです。これらの本と並んで、私が書いた文章術の本が選ばれるのか?と考えると、うなだれるしかありません。そのことを、鋭い言葉で指摘され、悔しさよりも悲しさ、それ以上に恥ずかしさがありました。

それから約5年。大きな落ち込みから、じわじわと湧き上がる出版への意欲。改めて、本の企画を考えました。

ダメだしを受けた「文章術」の本。「文章術」は既に類似の本が多く、この分野に後から割って入っていくことは困難だとわかります。ではどうすればよいか?

まずは、範囲を絞ることを考えました。
文章のなかでも、紙メディアには触れず、Webメディアに絞ったらどうか?

「文章術」-「紙メディア」=「Webに特化した文章術」

範囲の広い「文章の書き方」というテーマから紙メディアに関することを引き算して、「Webに掲載する文章の書き方」に絞りました。

次に
「Webに特化した文章術」に、SEOという視点を加えたらどうだろうか?
と考えました。

「Webに特化した文章術」+「SEO」=『SEOに効く!Webサイトの文章術』

これが1冊目のタイトルになりました。

ダメだしを受けた日から約5年。この期間に弊社はさらにたくさんの案件をこなし、Webに特化したライティングの経験、知見を蓄積。平行して、SEOに関するコンサルティングやコンテンツライティングの経験も積み重ねました。

仕事から導き出せた切り口が、「文章術×Web×SEO」だったのです。

テーマが決まったら、企画書を書いて、出版社に持ち込みます。次は企画書の書き方について説明します。

3:編集者に届け!企画書の書き方

テーマが決まったら、出版企画書を作り、出版社に持ち込みます。企画書の書き方に決まりはありませんが、A4で1~2枚程度の企画書と、A4で1~2枚の目次案、合計で2~4枚くらいの簡潔な企画書が喜ばれます。

理由は「編集者の方は非常に忙しい」からです。編集者の方は、自分が抱える本の編集作業をはじめ、さまざまな業務があり、その合間に新しい企画書に目を通すことになります。ぱっと見て、興味をもってもらえるような企画書が必要です。

企画書に盛り込む要素は、以下の通りです。

■タイトル

本のタイトルは、キャッチーでなければいけません。書店に並び、類書と肩を並べたときに「手に取ってみたい」と思わせることが大事。Amazonで類書を調べ、さらに売れている本のタイトルも調べ、複数のタイトル案を考えましょう。企画書に書き記すのは、1案です。複数案を考えて、最後に1案に絞るようにします。

■企画背景・趣旨

「なぜ、この本を企画したのか?」を具体的に書きます。ビジネス書の場合、特定の業界、特定のターゲットに絞った内容になることが多いでしょう。出版社の編集者の方にとっては、まったく知らないテーマの可能性もあるわけです。専門用語の羅列になってしまったら、編集者の方は読む気になりません。編集者の方が、興味をもって読み進め、理解しやすいように200文字~300文字でまとめます。

■想定読者(ターゲット)

「誰に読んでもらう本なのか」を定義します。ここが難しいポイントです。ビジネスにつなげようと考え、弊社の場合BtoBの書籍にしたかったのですが、出版社はBtoBよりも市場の広いBtoCを好みます。誰でも気軽に手に取ってもらえる本の方が売れる可能性が高いからです。

■類書

Amazonで類書を調べ、書籍名、著者名、出版社名を箇条書きに並べます。
編集者の方がここを見て、類書の販売部数などを調査するためです。類書が売れていれば、ある程度市場のあるテーマだということになります。

■類書との差別化

類書が売れていることは、市場があることの確認になると同時に、競合が浮き彫りになることでもあります。類書と同じような内容では、差別化ができません。ここでは、類書との差別化ポイントを明記します。「類書よりも深く書けるテーマがあるか」「類書には書かれていないことで、自分が書けることはなにか」を伝えましょう。

■目次

執筆前にすべての目次を考えることは難しいかもしれませんが、出版社の方に本のイメージをもってもらうためには、目次がいちばん役に立ちます。私は、1章から5章までの章タイトル、節タイトル、項タイトルまで入れた目次を作りました。書籍の目次ページと、ほぼ一致するくらいの深さです。目次だけで、Word文書A4で2枚分を使いました。

■装丁、価格

A5サイズなのか、B5サイズなのか、または大きめのA4サイズなのか、類書を参考に想定サイズを書きます。縦書きか、横書きか、ページ数、価格も、類書を参考に書き入れましょう。実際は、出版が決まった後に調整になることが多いのですが、ここを書くことによって、編集者の方がイメージしやすくなります。著者の本気度も伝わります。

■プロフィール

ウソは書けませんが、自分の経歴、実績を具体的に書き記します。例えば「〇〇に関するセミナーの実績多数」ではNGです。セミナー名称を具体的に書き、年間のセミナー本数などを数値化しましょう。自分で自分のことを誇張して書くのは、いやな気持ちになるかもしれませんが「この人の本を読んでみたい」と思わせることが大事です。「盛り気味」に書いてください。

■販売の協力・展開案

本の販促は、出版社のほうで行ってくれますが、「著者側でもこんな販促活動を行います」ということを決めて、書いておきましょう。弊社では、毎回自社で100冊ほどの購入をしています。クライアントや関係各所に送るためです。また弊社の公式メールマガジンでの告知、フェイスブック等で告知する旨もここに書きました。出版記念セミナー、イベントなどを行う予定があれば、それらも書いておきましょう。「著者側でもがんばって販促活動を行いますよ」ということを事前に伝えることで、出版社側にも多少の安心感が生まれます。

4:出版社への企画書の持ち込み

企画書ができたら、次は企画書を出版社に提出します。出版社に知り合いがいれば、知り合いを通して編集担当の方に企画書を見てもらうこともできるでしょう。ただし「たくさんの出版社に企画書を送り、見てもらいたい」「できればより大きな出版社から本を出したい」という場合は、出版エージェントにお願いする方法もあります。

出版エージェント(出版コーディネータとも呼ぶ)とは、出版社と著者の間を取り持つ代理人、仲介人のことです。業者によって、サポート範囲が異なりますが、自分ではアプローチできないたくさんの出版社とのコネクションがあるのが、エージェントの強みだと思います。

私の場合、最初は自力で企画書を書き、知人の紹介で某出版社に企画書を持ち込みましたが、結果は不採用。数年後に、ある方に出版エージェントを紹介していただきました。エージェントのおかげで、1冊目の企画の際には、3社ほど「企画書について話を聞きたい」と連絡をいただき、そのうちの1社で、出版が決まりました。

出版エージェントへは、企画書へのアドバイス、出版社への企画書持ち込み、出版社への同行などをお願いして、10万円~15万円と、印税の数パーセントを費用としてお支払いしました。エージェントによってサポート範囲、契約内容、費用などが異なりますので、調べてみてください。私がお世話になった出版エージェントもご紹介できます。

5:目指せ重版出来、1万部への道

ビジネス書って、何冊くらい売れるのでしょうか?

第153回 芥川賞を受賞した又吉直樹さんの『火花』は、累計300万部を超える大ヒット作品です。

ビジネス書の場合、こういった数値と比較する必要はありません。

「初版で何冊作るか」は、出版社のほうで決定します。一般的にビジネス書の場合、初版は3,000部~5,000部が目安です。これが売り切れたら、重版が決まります。

初めての本を出した際に、編集担当の方に「まずは、重版を目指しましょう」と言われます。数千冊の本が売れるのかなという大きな不安を抱えながら、1冊目の際には、Amazonキャンペーンを行いました。事前予約してくれた方に特典を付けるキャンペーンでした。メールマガジン等で告知して、スタッフ全員で、拡散活動をがんばり、クライアント様や友人たちが応援してくれたおかげで、なんとか重版となりました。

執筆中は静観するタイプの編集者の方が「1冊目の本で重版はすばらしいです」と初めて褒めてくださった記憶があります。

重版になると、他の出版社の目にもとまりやすくなります。そして2冊目の声がかかる、という流れができるようです。

重版の次の目標は、1万部です。「ビジネス書では、1万部突破したらヒット作ですよ」と編集者の方に言われました。2冊目の本が、幸運にも1万部を突破して、5冊のなかでもいちばんの販売部数になっています。

1冊目、2冊目である程度評価していただける数値が出せると、また別の出版者の方から声がかかることもあります。

つまり、1冊目がどれだけ大事かということがわかります。1冊目は時間をかけて企画を練ってほしいと思います。


6:まとめ

正直、出版はたいへんなことも多いです。ただそれ以上に得られることも多く、何よりもできあがった本を手にしたときの感動があります。「日々の仕事だけで手いっぱい」という方も、一度立ち止まって、出版にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

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