*本記事は、2022年6月に株式会社グリーゼで公開したものを、2024年10月に一部修正を加えて公開しなおしたものです

2022年5月19日、グリーゼ(現シェダル)は株式会社システムインテグレータ様と共同で、Webセミナー『結局SDGsって何をすればいいの?~他社の取り組みを自社の活動に活かそう~』を開催しました。

第1部では江島・福田・山口が「社会課題を解決する事業を立ち上げたい!SX推進のための7STEPとは?」というテーマで講演し、第2部では株式会社システムインテグレータ 代表取締役会長 梅田弘之様が「社員発想でSDGsの取り組みを具現化する手法」を解説しました。
本レポートでは、各講演のダイジェストをご紹介します。

セミナー概要
・セミナータイトル:
 結局SDGsって何をすればいいの?~他社の取り組みを自社の活動に活かそう~
・開催日:2022年5月19日(木) 10:00~11:30
・主催:株式会社システムインテグレータ、株式会社グリーゼ(現シェダル)
・会場:オンライン開催(Zoomを使用)

社会課題を解決する事業を立ち上げたい!SX推進のための7STEPとは?

SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは、企業のサステナビリティ(企業の稼ぐ力の持続性)と、社会のサステナビリティ(将来的な社会の姿)を両立させながら経営を行っていくことです。

SXを前提とした事業開発では、今までの資本主義経済では対立していた概念を両立させる必要があるため、手法にもイノベーションが求められると江島は語りました。

Webセミナーでは、グリーゼ(現シェダル)が提案する「SX推進のための7STEP」(下図参照)について解説しました。
その中から、「⑦自社の課題と社会の課題を紐づけて、ビジネスモデルを構築する」を取り上げて、グリーゼ(現シェダル)が実際に新規事業開発に取り組んだ事例を交えてご紹介します。

⑦-1 解決したい社会課題は何か?

社会課題を洗い出す際には、何らかの「切り口」を用意すると抜け漏れを防げます。

グリーゼ(現シェダル)はSDGsの169のターゲットを切り口としましたが、粒度が大きすぎて企業規模によっては「自分ごと化」しにくいため、17の目標を切り口にする方がマッチする場合もあります。

SDGsの視点だけで考えると机上の空論になりやすく、事業を生み出すエネルギー(情熱)につながらない可能性があるため、自社の課題と社会課題が重なる部分を事業対象にするとよいでしょう。

⑦-2 その社会課題を解決できる自社のリソースは?

リソースの洗い出しにも、何らかの「切り口」を用意するとスムーズです。

グリーゼ(現シェダル)では会社のライフチャートを作成しました。ライフチャートは、企業の歴史を知らない社員でもリソースの全体像を把握できるメリットがある一方で、課題と関係なくリソースを洗い出すので効率が悪いというデメリットもあります。

ただし、全てのリソースを洗い出しておけば、後の段階で利用できることもあります。

⑦-3 社会課題と自社のリソースを紐づけて、ビジネスアイデアを創出する

社会課題には必ず、トレードオフ(何かを成し遂げようとして、他の何かを犠牲にしてしまう状況)が発生します。これまでは、経済成長のためには社会・環境に悪影響を与えても仕方ないとされてきました。

しかし今後は、企業は社会・環境に悪影響を与えずに、利益を上げて成長していく方法を考える必要があります。ビジネスアイデアの創出では、利害が対立する複数の登場人物がwin-winになるような、画期的なアイデアが求められます。

グリーゼ(現シェダル)では8つのアイデアが生まれ、3つの案に収束しました。

⑦-4 ビジネスアイデアを検証する

社会課題が今まで解決されなかった理由を明確にした上で、生み出したアイデアが本当にトレードオフを解決できるのか検証します。

グリーゼ(現シェダル)ではこの後、創出したアイデアに対してさらに深い検証に入る予定でしたが、「なんとなくピンとこない」という違和感があったため、検証をストップしました。
違和感の理由を探ると、経営理念を抜きにして社会課題の解決を目指していたことに気がついたのです。自社の経営理念を再度振り返り、それまでに出していた案を捨てて、新しくアイデアを練り直しました。
グリーゼ(現シェダル)は新規事業開発を通して、「SXを前提としていても、事業活動の根幹には企業理念を置くことが重要」と学びました。

全ての社会課題にはトレードオフがあります。トレードオフを解決するアイデアの種をたくさんまいて、育てていきましょう。

社員発想でSDGsの取り組みを具現化する方法(株式会社システムインテグレータ様)

システムインテグレータ様は、2020年12月にグリーゼ(現シェダル)が主催したWebセミナー『企業がSDGsの情報発信に取り組む5つのメリットとは』を受講したことがきっかけで、SDGsへの取り組みを始めました。

1年目:子ども食堂のホームページ作成

1年目の取り組みはトップダウンで開始。社長メッセージや中期経営計画でSDGsを社員に浸透させて、組織横断のSDGsワーキンググループを発足しました。
そこからはボトムアップ方式での取り組みに移行して、各組織でアイデアを募集し、アクションプラン化して実施しました。

実施したアクションプランの1つが、子ども食堂のホームページ作成です。きっかけは、SDGsへの取り組みの一環として子ども食堂に寄付しようとしたことでした。
子ども食堂について調べてみると、ホームページを持っていないところが多く、活動状況がわからないという課題に直面したのです。

そこで、お金を寄付するだけではなく、IT企業らしい取り組みで支援しようと考えました。Facebookで「子ども食堂のホームページを作るグループ」を立ち上げて、ボランティアを募集。
無料のホームページ作成ツールでテンプレートを作成して、作業手順書を整備し、ボランティアに作業を割り振ってホームページ作成を進めました。

ホームページ作成後、新たな課題を発見しました。子ども食堂のスタッフはITがあまり得意でない人が多いため、ホームページを作成しても使いこなすのが難しいという点です。
解決策を検討した結果、スマートフォンで簡単にホームページを更新できるようにして、ボランティアがフォローすることになりました。

2022年5月19日現在、本社のある埼玉県内の子ども食堂のホームページ16件を作成。そのうち12件が完成して公開されました。
将来的には埼玉県だけでなく、全国に展開していきたいと考えています。

2年目:アイデア創造をサポートする「IDEA GARDEN」を利用

2年目はボトムアップでの取り組みをさらに定着させるため、自社開発したアイデア創出プラットフォーム「IDEA GARDEN」を利用しました。
このプラットフォームは、社員が主体となってアイデアを創造し、具体的なアクションプランにつなげていくための「発想」、「共有」、「育成」の仕組みを備えています。

まずは「IDEA GARDEN」に、アイデアを発想するためのヒントをテーマに沿って設定します。SDGsへの取り組みでは、SDGsの17の目標や、他社の取り組みなどをヒントとして登録。
アイデア発想のワークショップをリモートで開催し、社員に自由に発想してもらいました。思いついたアイデアを「IDEA GARDEN」に登録すると、他の社員に共有されます。

それぞれのアイデアにコメントや「いいね」を付けながらブラッシュアップしていき、よいアイデアが育ったら企画にまとめます。企画が経営会議で承認されたら、各組織で実行へと進んでいきます。

質疑応答

受講者の方からオンラインで受けた質問に、講演者が回答しました。一部をご紹介します。

Q. SDGsの目標達成に向けた企業の取り組みについて、具体的な数値目標の設定例を知りたいです。

A. 数値目標に関しては、現状の数値を把握し、それに対して長期目標、中期目標、短期目標を決めていただきます。現実的に考えて短期目標を決める企業と、バックキャスティング(未来のあるべき姿を描き、逆算して今何をするべきかを考える手法)で長期的な大きい目標を掲げる企業、どちらもあります。(回答者 福田)

Q. SDGsの取り組みに消極的な社員がいたら、どうすればいいでしょうか。

A1. 消極的な社員がいるのは当然なので、情熱のある社員だけで進めます。20〜30%の理解者がいればいいと考えています。さまざまな取り組みが形になって、積極的に取り組む社員が自然と増えていくのが一番だと思います。(回答者 システムインテグレータ 梅田様)

A2.グリーゼ(現シェダル)も、SDGsの取り組みを始めたばかりの頃は、社員の意欲はバラバラでした。先進的な取り組みを行っている企業の視察に行って感銘を受けたことでスイッチが入りました。視察に行っても全員が同じように意識向上するわけではありませんが、一部でも積極的に動き出す社員がいることが重要と考えています。(回答者 江島)

▼グリーゼ(現シェダル)では、企業のSDGs/サステナビリティの推進や情報発信の支援を行っています。
「SXを前提とした事業を開発したいが、何から始めればいいのかわからない」という方はぜひご相談ください。

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