2015年のパリ協定 では、すべての国連加盟国(197カ国・地域)が、世界の平均気温の上昇を、産業革命以前と比べ2℃よりも十分低く保ち(2℃目標)、1.5℃に抑える努力をする(1.5℃努力目標)で合意しました。

日本では、中期目標として2030年度までに26%削減(2013年度比)、長期目標として2050年カーボンニュートラル (温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする)、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しています。

出典:ESG地域金融の推進について 環境省

これに伴い、金融庁、財務省、経済産業省、環境省、国土交通省など各省庁において、さまざまな推進活動が行われています。

企業も同様に、各社さまざまなサステナビリティ推進、ESG推進の取り組みを行っていますが、適切な推進を行うためには、日本政府の動きを見極めることも重要です。

このコラムでは、最新動向をキャッチする方法と、その活用術について解説します。

今回は、国土交通省編です。

国土交通省のサステナビリティ推進活動の内容

国土交通省の役割は、国土の計画・整備、交通政策、都市開発、住宅政策、観光振興などを通じて、日本の持続可能な発展と国民の安全・安心を確保することです。

サステナビリティに関しては、以下のような役割を果たしています。

  • 持続可能な交通インフラの整備
    「環境に優しい交通手段の推進」や「エネルギー効率の高いインフラの整備」を強化し、持続可能な都市づくりを支援しています。
  • 環境負荷の低減
    エコドライブや公共交通機関の利用促進を行い、交通がもたらす環境への影響を軽減しています。

    ※エコドライブ:エコドライブとは、環境に配慮した運転方法や、車の利用方法のことです。燃費を向上させ、CO2排出量を減らす運転技術や行動を含みます。

省エネ技術や再生可能エネルギーの導入を推進する国土交通省の施策は、生活や企業活動にも密着しており、分かりやすいものが多いです。

例1)クリーンエネルギー対応の物流網
国土交通省は、持続可能な交通インフラの整備として、クリーンエネルギー対応の物流網の構築を進めています。具体的には、太陽光発電や風力発電から得たクリーンな電力を使用した物流施設の利用、電動トラックの利用、効率的な輸送ルートの計画や輸送手段の最適化などに取り組んでいます。
企業は、クリーンエネルギー対応の物流網を利用することで、持続可能な輸送手段を活用し、サステナブルなサプライチェーンを構築することができます。

例2)モーダルシフト
昨今の働き方改革関連法による長時間労働の是正や働き方の多様化の求めに伴い、トラック運送業界では人手不足が深刻化しています。その解決策の一つとしてあらためて「モーダルシフト」が注目されています。この「モーダルシフト」を促進する政策を策定・推進しているのが、国土交通省です。
モーダルシフトとは、貨物輸送をトラックからより環境に優しく効率的な鉄道や船舶に切り替えることです。1981年まだ運輸省だった時代に初めて提言されました。当初は省エネルギー対策として取り上げられましたが、その後、労働力不足対策や地球温暖化対策など、時代とともに目的が変化しています。

このようなことがわかると、企業は国土交通省をより身近で重要な存在として捉えることができるでしょう。

国土交通省のサステナビリティに関する最新動向

国土交通省のサステナビリティに関する最新動向は、以下のWebサイトに集約されています。

国土交通省の審議会・委員会等
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/index.html

以下のような審議会や委員会がありますので、自社に関連しそうなものをチェックしておきましょう。

  • グリーン社会小委員会
  • 建設リサイクル推進施策検討小委員会
  • 物流体系小委員会
  • グリーン社会ワーキンググループ
  • 物流拠点の今後のあり方に関する検討会

など

国土交通省のサステナビリティ最新動向の活用術

例えば、以下の委員会を見てみましょう。

産業構造審議会 商務流通情報分科会 流通小委員会
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/distribution/

本委員会では、新物流効率化法(物効法)の施行に向けて、「トラックドライバーの運送・荷役等の効率化」などについて議論が行われています。

2025年4月(想定)法律の施行①
 基本方針
 荷主・物流事業者等の努力義務・判断基準
 判断基準に関する調査・公表
2026年4月(想定)法律の施行②
 特定事業者の指定
 中長期計画の提出・定期報告
 物流統括管理者(CLO)の選任

基本方針のポイント
(1)トラックドライバーの運送・荷役等の効率化の推進の意義・目標
・ 物流は、国民生活や経済活動を支える不可欠な社会インフラであり、安全性の確保を前提に、荷主・物流事業者・施設
管理者等の物流に関わる様々な関係者が協力し、令和10年度までに、以下の目標の達成を目指す。
① 5割の運行で、1運行当たりの荷待ち・荷役等時間を計2時間以内に削減(1人当たり年間125時間の短縮)
② 5割の車両で、積載効率50%を実現(全体の車両で積載効率44%に増加)
(2)トラックドライバーの運送・荷役等の効率化の推進に関する施策
・ 設備投資・デジタル化・物流標準化、モーダルシフト、物流人材の育成等の支援
(3)トラックドライバーの運送・荷役等の効率化に関し、荷主・物流事業者等が講ずべき措置
・ 積載効率の向上等 ・ 荷待ち時間の短縮 ・ 荷役等時間の短縮
(4)集貨・配達に係るトラックドライバーへの負荷の低減に資する事業者の活動に関する国民の理解の増進
・ 再配達の削減や多様な受取方法等の普及促進 ・ 「送料無料」表示の見直し
・ 返品の削減や欠品に対するペナルティの見直し
(5)その他トラックドライバーの運送・荷役等の効率化の推進に必要な事項
・ 物流に関わる多様な主体の役割  ・トラックドライバーの運送・荷役等の効率化の前提事項

運送業者にとっては、国土交通省のサステナビリティ最新動向は、常にチェックしておくべきです。

運送業者以外でも、特に荷主となる企業は、国土交通省のサステナビリティ最新動向をウォッチして、自社がどのように取り組むべきかを考えていく必要があります。

これらの情報をウォッチしていれば、例えば、荷主側となる企業にとして、以下の活動に結び付けることができます。

  • 予約システムを効果的に活用するために、自社のデータ収集・分析を行い、配送の効率化を図る
  • 混雑時等を考慮した輸送料金変動制を活かした時間帯での配送計画策定
  • 配送をよりコンパクトにするために、パレットに見合った商品サイズにしていく

まとめ

企業規模に関わらず、国土交通省の最新動向をキャッチして、今後どのようなことが求められていくのか、必要となっていくのかを読み取り、準備しておくと良いでしょう。

今後、ESGに関する規制強化や法改正が進みます。他社より先に、ESGへの取り組みを進めるとともに、正しくわかりやすく言語化して開示していくことが重要です。
これにより、投資家・取引先・消費者・従業員などのステークホルダーからの評価を高め、ブランドイメージや企業価値をより高めることが可能になるからです。

次のコラムも、あわせてお読みください。

コラム
サステナビリティ/ESG対応の鍵:最新動向とその活用術(金融庁編)
コラム
サステナビリティ/ESG対応の鍵:最新動向とその活用術(経済産業省編)

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