「統合報告書」を読もう。 10年後の成長企業を見抜く、新しい企業分析の常識

営業

最近仕事で「統合報告書」という言葉をよく聞きます。競合調査やパートナー探しなら、会社のHPと売り上げデータ(信用調査)を見れば十分では?「統合報告書」って、ページ数も多く、専門用語が多くて・・・

ふくろう先生

ホッホッホ。 その「いつもの確認」だけで満足してしまうのが、「御用聞き営業」で終わる人と、「ビジネスパートナー」の分かれ道じゃよ。

営業

うっ、痛いところを(汗) でも、事業内容(HP)をある程度調べて、担当者の方からヒアリングして・・・提案書作成は得意なんですけどね。

ふくろう先生

悪くはないが、HPはきれいに整えられたショーケース。売上げはすでに終わった「過去の結果」じゃ。

相手が「雪山」に行きたいか「ハワイ」に行きたいか(=未来の目的地)を知らずに、最高級のダウンジャケットを提案しても断られるだけじゃろ? その「行き先(未来)」を知るための羅針盤が、統合報告書なんじゃよ。

「バックミラー」と「ショーケース」だけを見ていませんか?

営業や企画の仕事をしていると、取引先や競合他社のリサーチは必須ですよね。しかし、以下の2つだけで満足してしまっている人も多いのでは?

  • Webサイト(会社概要):現在のショーケース(きれいに整えられた「表向きの顔」)
  • 売上・利益データ:過去のバックミラー(あくまで「終わった結果」であり「未来」ではない)

もちろん、これらは基礎情報として大切です。

しかし、ビジネスの提案や投資判断において最も重要なのは、「この会社は、これからどこへ向かおうとしているのか?」という「未来への意思」です。

「昨年は売上が好調でしたね」と過去を褒める営業担当と、「御社が描く2030年のビジョン実現のために、この課題を一緒に解決しませんか?」と未来を語れる営業担当。

あなたなら、どちらの営業担当の方と、商談を続けたいでしょうか?

統合報告書は、企業の「未来の設計図」

統合報告書が、他の資料と決定的に違う点。

それは、企業が「財務(数字)」と「非財務(ストーリー)」を統合し、未来への道筋を語っている点にあります。

ここには、企業としての本気が詰まっています。

  • トップメッセージ:社長が何に悩み、どんな価値観で未来を見ているか
  • 価値創造ストーリー:自社の強みを活かし、どうやって社会に価値を生み出すか
  • マテリアリティ(重要課題):企業が優先的に解決しようとしている社会課題は何か

これらは、単なるきれいごとのPRではありません。

企業が生き残りをかけて描く「10年後の勝算」です。この「未来の地図」を手に入れることで、あなたの提案は「売り込み」から「経営課題への解決策」へと進化します。

GAFAの企業価値の9割は「決算書」に載っていない

「でも、結局は、売上や利益といった数字がすべてでしょう?」 そう思うかもしれません。

しかし、実は世界の常識は変わってきています。

GoogleやAppleなど、世界を牽引するGAFA(巨大IT企業)の企業価値の約90%は、実は「非財務情報(見えない資産)」だと言われています。

  • 財務情報(見える資産):工場、在庫、現金など(価値の約10%)
  • 非財務情報(見えない資産):ブランド、技術力、人材(人的資本)、データ、顧客基盤など(価値の約90%)

決算書に載っている「数字」は、企業の実力のほんの一部にすぎません。

統合報告書で、「非財務情報(人的資本・自然資本など)」 を読み解くことは、その企業の「真の実力(稼ぐ力の源泉)」を見抜くことと同じなのです。

営業

なるほど! 相手の「過去の成績」や「表向きの顔」ばかり見て、ほんとうの価値である「見えない資産」や「未来の話」を見ていなかったんですね。これじゃあ、勝てる提案ができるはずありませんね。

ふくろう先生

その通りじゃ。相手を深く知れば、そこに信頼が生まれる。統合報告書は、ビジネスという航海において、ライバルに差をつける「最強の武器」になるんじゃよ。