
ここがポイント(シェダル考察)
ミズノ株式会社は、1906年創業の老舗スポーツ用品メーカーです。スポーツ用具・ウェア・シューズなどをグローバルに展開しています。
サステナビリティレポートは、戦略的な全体構成と事業特性を活かした情報発信が非常に優れており、特に以下の点が注目されます。
- 「トップ マネジメントメッセージ」セクションにおいて、社長のみならず、「人事担当役員メッセージ」「技術担当役員メッセージ」が個別に掲載されている点に特徴があります。「人」と「技術」という企業の基盤要素が、いかに戦略的にサステナビリティへ貢献しているかが伝わります。
- 「経営とサステナビリティ戦略」セクションにおける「価値創造ストーリー」の提示に加えて、独立した「スポーツによる価値創造」セクションを設けている構成は、独自の特徴を際立たせています。特に後者では、「スポーツを通じた心身の健康」「スポーツを核とした地域コミュニティの発展」「スポーツを軸とした多様性の推進」「運動機能の維持による健康寿命の延伸」「子どもの体力・運動能力の向上」「ミズノの技術を応用したSDGs貢献」といった、スポーツがもたらす多面的な社会価値が、個別の「重要課題」として明確に整理されており、説得力のある展開となっています。
こうした「スポーツによる価値創造」に関連する取り組みは、レポートに記載された内容にとどまらず、外部発信を通じてさらに広がりを見せています。
たとえば、環境とスポーツの両立をめざした技術開発として、バイオポリマーを用いた生分解性の人工芝(人工芝葉および充填材)の開発が挙げられます。これは、従来の人工芝が引き起こしていたプラスチックごみ流出の問題に対応するもので、海洋で分解可能な素材を使用したスポーツ用ロングパイル人工芝の開発は世界初とされています。スポーツ分野の技術革新を通じた環境課題への具体的な貢献事例としても注目されます。
(参考:ニュースリリース)「世界初の海で分解する人工芝葉を採用したスポーツ用ロングパイル人工芝と充填材をカネカと共同開発」 - 「気候変動戦略」セクションにおいては、「TCFD提言に基づく情報開示」として、ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標の4要素を明示しており、国際的開示フレームワークへの対応が丁寧に行われています。また、同時に「環境(Environment)」セクションにおいても「重要課題:気候変動」が個別に取り上げられており、TCFD対応の戦略的側面と、環境マネジメント文脈における気候変動への配慮の両面を整理しています。これにより、多角的な視点からミズノの気候変動対策を把握できる構成となっています。
- 「マテリアリティ(重要課題)」セクションでは、特定プロセスと個別課題の両方が詳細に説明されており、全体構成との一貫性が保たれています。たとえば「人権を尊重した責任ある調達」「人的資本経営」「ライフサイクルを通じた地球環境への責任」「安全で高品質な製品への責任」などの重点テーマが、他セクション(「人的資本戦略」「環境」「ガバナンス」など)と連携して配置されている点も、理解しやすく、体系的な情報整理がなされていることを示しています。
こうした人的資本領域の取り組みは、外部からの客観的評価にも表れています。たとえば、経済産業省および日本健康会議から「健康経営優良法人(ホワイト500)」に2025年も認定されており、2018年から8年連続での認定取得となっています。また、従業員のスポーツ実践を支援する姿勢が評価され、スポーツ庁より「スポーツエールカンパニー2025」の認定(シルバー認定も含む)も受けています。これらの認定は、従業員のウェルビーイングや健康経営への継続的な取り組みを裏付けるものといえます。
これらの要素から、ミズノ株式会社のサステナビリティレポートは、単なる情報開示にとどまらず、企業のパーパス・ビジョン・バリューズから各戦略・取り組み内容までを一貫して伝える、高品質なサステナビリティ・コミュニケーションの事例といえます。これから、サステナビリティページなどを作成しようとする企業にとって、ここまでの構成や内容を一度に整えるのは簡単ではありませんが、将来的に目指すべき一つの理想的なモデルのひとつとして、とても参考になる好事例です。
会社情報
運営主体 | ミズノ株式会社 |
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名称 | サステナビリティレポート |
URL | https://corp.mizuno.com/jp |
URL(サステナビリティ/SDGs) | https://corp.mizuno.com/jp/sustainability/sustainability-report |
所在地 | 大阪府 |
カテゴリ | その他製品 |
※2025年6月現在の情報に基づいて執筆されたものです。その後、変更されている可能性もあります。予めご了承ください 。

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