インパクト株式会社 代表取締役 加藤一興氏

2025年10月、奈良県奈良市にある「インパクト株式会社」様(以下、インパクト株式会社)に訪問しました。同社は、「人が集う時に求められるノウハウや機材を提供する」をコンセプトに、イベントの成功を裏側から支える集団です。年間1,000件以上ものイベントを手がけ、コンサートや各種イベントの音響をベースに確かな実績を重ねています。今回は、会長の加藤勉氏と、社長の加藤一興氏にお話を伺いました。

「新しい需要をつくる」から始まった事業

会長に、創業の経緯を聞くと、次のように語ってくださいました。
「ソニー時代に、音楽や舞台の現場に触れたことが、この仕事の出発点です。音響技術が好きというよりは、“新しい需要を創る”という発想で、音響事業を展開してきました。奈良県では、寺院関連のイベント、市民会館、行政案件、学会、講演など“人が集う場”がたくさんあります。“音響”をきっかけに、さまざまなステークホルダーと一緒に“イベントをつくる力”が強みとなり、音響技術を核にしながらも、社会課題・行政課題の解決イベントまで領域を広げ、今に至っています」

現在の課題

地域のお祭りや伝統芸能など、地域に根ざした文化は担い手不足で継続が難しくなる場面が増えています。現場では、続いてきた催事・行事が「次の年は開催できるのか」といった切実な問いに直面します。こうした状況を前に、同社は「もうこれは無理やな」と嘆くだけでなく、縮小社会でも続けられる形を探りながら、イベントの場を成立させてきました。

社長の言葉。「ニュースとかで地方の現状を聞いたことあるでしょ。大変だなって。でもそれで普通の人は終わり。でもわたしたちは違う。身近の人と話したり、聞いたりしていると、どんどん自分の課題になってくるんです。自分ごとにだんだん近なってくればくるほど危機感が増してくる。基本的にもう全部が“やばい”というのを肌で感じる。何とかせなあかんっていうのからはじまって、地域の課題をちょっとでも手助けできたらなと。それがちょっとでも地域発展につながったらなと」。

課題解決のために取り組んでいること

インパクト株式会社は、“場を絶やさない”ための改善も積み重ねています。

・デジタル化:行事の応募・決済・運営に関わる情報をデジタル化し、運営を効率化。人的不足の解消とミス低減に寄与しています。

・資源を活かすメンテナンス:主要機材はパソコン同様に適切なライフサイクルで更新しつつ、ケーブル類は自社で修理して長く使う運用を徹底。廃棄削減とコスト抑制を両立しています。

・人を育てる「ローテーション」:専門性のある人材の「獲得」は年々難しくなっています。この課題に対し、同社は「育成」と「定着」に光を当てた独自のローテーション制度を導入しています。
 ※常に両方の立場を経験: 年次に関わらず、全員が案件のリーダーとメンバーの双方を経験することで、多角的な視点を養います。案件に応じて体制が入れ替わるため、互いに支え合う文化の中で、若手も段取り力や意思決定力を実践的に身につけられます。  ※「全体像」の把握: 担当に戻った際もリーダーの視点を生かせるため、企画から運営までの全体像で動ける人材が育ちます。※ 視野とモチベーションの向上: 行政、民間、寺社仏閣、ホール管理など多様な現場に触れる機会が視野を広げ、地域への帰属意識やモチベーション向上にもつながっています。

これらは、現場が回り続けるための実務的な「持続可能性(サステナビリティ)」を支える仕組みとして有効といえます。

事業そのものがサステナ(=見えないインフラ)

人が顔を合わせ、「関係が育まれる場」を成立させ続けること自体に価値があります。
一方で奈良という土地は、「歴史がある分、他の町では真似ができない」寺社・世界遺産・文化財といった強みを持ちながら、若者の流出やナイトタイムエコノミー面では大阪に吸引されやすい現実も併存します。強みと弱みのはざまで、催事・行事を絶やさず成立させるインパクト株式会社の営みは、地域の持続可能性をつなぐ、いわば、“見えないインフラ”です。

最後は“場”が残る。地方創生は、ここからしか始まらない

奈良の強みと弱みの狭間で、“場”を絶やさず存在させ続ける営みは、容易ではありません。
地方創生は、正論や将来ビジョンだけでは動かない。結局は、「現場を手離さない人」が回す世界です。
社長の言葉。「奈良は、遣唐使に象徴される挑戦の地でした。あの未知に挑む勇気が今も息づいていれば、日本も奈良も、もっと先へ進めていたかもしれない。奈良は挑戦する精神の原点。その志を受け継ぎ、未来へと繋いでいきたい。」
“もう無理やな” そうつぶやきたくなる状況が目の前にあるときこそ、手を離さずに回し続ける現場力。インパクト株式会社の仕事は、その連続の中にあります。

会社情報

企業名インパクト株式会社
代表者代表取締役 加藤 一興
URLhttps://www.impact.co.jp/
所在地奈良県奈良市
事業内容各種イベント企画、運営、制作
各種イベント運営時における音響、映像、照明、舞台設営
ITシステムサービス

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