株式会社トコウ(埼玉県入間市)

2025年10月、東京都入間市にある「株式会社トコウ」様に訪問、工場見学をさせていただきました。

塗装業と聞いていたので、ローラーで家の外壁を塗るようなイメージで、トコウ様に伺ったのですが、実際に現場を訪れてみると、その印象は一瞬で変わりました。

社員のみなさんの「こんにちは!」の元気なご挨拶をたくさん受けながら、工場を見学させていただくと、そこにあったのは、色と質感を自在に操る「技術」と「アートのような世界観」でした。

そして、印象的だったのは、SDGsのアイコンが工場のあちこちに貼られていたことでした。


塗装コンシェルジュが生み出す、無限の表現力

株式会社トコウは、「塗装コンシェルジュ」を掲げ、お客様の「困った」に寄り添い、最適な塗装を提案するプロフェッショナル集団です。

ハイクオリティでデザイン性の高い塗装から、短納期・小ロット対応、さらには塗装が難しいとされている素材への高密着塗装まで対応しています。

多様なニーズに応える柔軟さと、高い技術力、知識、ノウハウを兼ね備えていることを感じました。

写真撮影が制限されていたため、ここでは一部しか紹介できませんが、
並んだサンプルの数々から伝わるのは、その「表現力の豊かさ」です。

ラメがきらめき宝石のような製品、光の角度で色が変化する幻想的なパネル、強く冷たい金属なのに木目調の温かみをもった窓枠など、「え~どうやって塗るの?」と思うほど「独創的で表現力のある色や質感」ばかりでした。

クライアントの中には有名ブランドも多く含まれており、気づかぬうちに、私たちの日常生活の中にトコウの技術が息づいていることを実感しました。

塗装とは「表面を整える」作業ではなく、素材の個性に合わせて、新しい色合いや光沢を生み出す仕事なんですね。

「アート×工学」という表現は少し大げさに聞こえるかもしれませんが、工場のあちこちで、塗装によって素材が新しい表情をまとう瞬間を見たような気がしました。

「進化する塗装屋」の3つの進化とは?

経営理念に「進化する塗装屋」を掲げている株式会社トコウ。私が感じた「進化する塗装屋」とは、「技術・人・仕組み」の3つが進化している姿でした。

進化する塗装屋(1)技術

ひとつめは、進化の根幹にある「技術への探究心」。塗装技術って、すごく幅が広くて、金属製品、木工製品、樹脂製品、特殊製品、建築塗装など、私たちの身の回りにあるものには、塗装されている製品がとても多いことを知りました。

大量製品への塗装は、機械化が進んでいるそうですが、トコウが手掛ける製品は、機械化や大量生産ができないものばかり。それらにひとつひとつ対応する技術って、途方もないなと思いました。

進化する塗装屋(2)人

ふたつ目は、技術を支える「人間力」。熟練の職人さんたちは、ミリ単位で動きを制御しながら、小さいものから大きなものまで均一に塗ることで、繊細な仕上がりを生み出します。

いくつもの工場やエリアをご案内いただき、社員の皆さんから直接お話を伺う中で、仕事に対する自信と誇りがひしひしと伝わってきました。

進化する塗装屋(3)仕組み

3つ目は、仕組みの進化です。トコウは、塗装前後の工程や、自社でできない塗装にも対応できるようにと、町工場同士のネットワークを構築しているのです。

自社だけで完結せず、地域の企業と力を合わせることで、より高品質で柔軟なものづくりを実現。この「共創の仕組み」は、トコウだけでなく、塗装業、製造業、中小企業、さらには日本全体のサステナビリティ(持続可能性)への取り組み、そのものだと確信しました。

SDGsは「掲げる目標」ではなく「現場で働く人の行動指針」

工場を歩いていて印象的だったのは、SDGsのアイコンがあちこちに掲げられていたことです。

水回りには、「目標6:安全な水とトイレを世界中に」、設備のそばには「目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに」や「目標12:つくる責任 つかう責任」。

資源の再生にも取り組んでいて、Webサイトを拝見すると、塗装業として、さまざまな環境問題にも取り組んでいることがわかりました。

トコウのSDGsアイコンの使い方は、よくある「ポスター的な掲示」ではありません。作業動線の中に自然に溶け込み、社員一人ひとりの意識と行動を支える「現場のサイン」「行動指針」として機能しているのです。

これなら、排水の管理、水の再利用、エネルギー効率の最適化、廃棄物の分別など、「日常の作業そのもの」がSDGsにつながっていることを、日々の仕事を通して意識することができます。

SDGsを「特別な活動」として切り離すのではなく、日々の業務に取り込み、継続的な改善や工夫へとつなげていく。その姿勢こそが、トコウが掲げる「進化する塗装屋」の本質を体現しているように感じました。

塗装という、環境負荷と隣り合わせの仕事だからこそ、「できることを、現場から変えていく」ことが大事なんですね。その一歩一歩の積み重ねが、持続可能なものづくりへのリアルな道筋になっているのだと教えてもらった気がします。

主役は、社長ではなく「技術」と「人」と「仕組み」

斗光社長は写真に写ることを好まれず、この日も、ある団体の方へ説明されている様子のみ撮影させていただきました。いわゆる「ブログのトップ画像」となるような社長のワンショットは、叶いませんでした。

しかしそれは、トコウの主役が「人」と「技術」と「仕組み」ということの現れかもしれません。半日間の工場見学と会社説明を通して、その答えが見えてきたような気がします。

トコウでは、現場の社員が中心となり、技術とチームワークで価値を生み出しています。斗光社長は、その一人ひとりを信頼し、任せ、支える立場に徹している。「進化する塗装屋」という理念も、「塗装コンシェルジュ」という言葉も、社員への信頼と誇りの上に成り立っているのだと感じました。

今回の訪問を通じて、私の「塗装」に対するイメージは大きく変わりました。単に色を塗る作業ではなく、新しい価値を創造する仕事なのだと。進化を続けるこの現場を、いつかまた訪れてみたいと思います。

▼株式会社トコウ 公式HP
https://toko-toso.com/

株式会社トコウ 代表取締役 斗光健一氏

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