*本記事は、2021年5月に株式会社グリーゼで公開したものを、2024年10月に一部修正を加えて公開しなおしたものです
「企業としてSDGsに取り組みたいが、全社員を巻き込むのは難しい」
そんなふうに思ってはいませんか?
SDGsの17の目標は、ひとつひとつが壮大すぎて、自分には関係ないと感じてしまう人が多いのが現実。スタッフも、社内研修を受けたり、本を読んだりすることで、頭では理解できるようになってきました。でも、自分事としては腑に落ちていない状態でした。
そこで、「SDGsを自分事として捉えるのに最適」というカードゲームを社内研修としてやってみることになりました。こちらの記事(「SDGsの社内浸透のために、なぜカードゲームが有効なのか?」)でグリーゼ(現シェダル)のSDGsビジネスコンサルタントである福田が強くおすすめしているゲームです。
どんなゲームなのか、そして、どんな気付きがあったのかをレポートします。
どんなゲーム?
「SDGsカードゲーム」は、楽しくSDGsの本質と可能性を理解するためのツールです。今回、私たちがやったのは、福田が公認ファシリテーターとして認定されている『SDGs de 地方創生』。全世界の共通目標として位置づけられているSDGsの考え方を取り入れて、日本の地方創生を考えてみよう!という趣旨のカードゲームです。
参加者は、日本の地方都市を想定した同じ「まち」に暮らしているという設定。そのまま放置していたら、人口は減り、産業は活力を失ってしまいます。そこで、何らかの対策をする必要があり、この対策がいわゆる「地方創生」です。
ゲームのプレーヤーには、一次産業事業者、観光事業者といった「役割」と「個人のゴール」が指定されます。
「プロジェクトカード」に書かれたプロジェクトを実行しながら、「個人のゴール」と「よいまちづくり」の達成をめざします。まちは、「人口」「経済」「環境」「暮らし」の状況を示す「状況メーター」で評価される、というのがゲームの大まかな流れです。
私の役割は「行政職員」でした。私が実行したプロジェクトを1つ簡単にご紹介しましょう。
そのプロジェクトの達成に必要な条件は、お金(3億Gs※)と、人的リソース3つ。達成による報酬は5億Gsで、まちに対する影響は、経済の状況メーターを1増やし、環境の状況メーターを1減らしました。
※Gs(ジーズ):お金の単位
これはつまり、「行政が実行した公共事業は、経済効果はあったが、環境を破壊した」ということになります。プロジェクトは日本のどこかで本当に行われたものに基づいているので、クリア条件やまちに与える影響は、かなりリアルな設定になっています。私の個人ゴールが「経済の状況メーターを増やすこと」でしたので、ゴールに一歩近づいたのですが、わがまちの環境を破壊したという事実も同時に起きたということです。ちょっと胸が痛みました。
「風が吹けば桶屋が儲かる」って言うけれど、SDGsはまさに、それだった
ゲーム後に振り返り、気付いたことを2つ取り上げます。
1つ目のキーワードは「連鎖」
人口が増えると思って実行したのに、「人口」は変わらず、「暮らし」の状況メーターを減らしてしまった(つまり、住みにくいまちになってしまった)プロジェクトがありました。なぜ、こんなことになったのでしょうか?
これについて、福田の解説は以下のとおり。
「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉があります。これは、「風が吹く」と「桶屋が儲かる」という一見すると関係なさそうなことが、「風→砂埃→失明→三味線→猫→ネズミ→桶→桶屋」という連鎖をもって関係していることを表しています。
この「連鎖」という考え方はSDGsの本質のひとつ。
例えば、「アフリカのチャド湖が地球の温暖化の影響を受けて、干上がり、小さくなった」ことにより、さまざまな連鎖が起き、「イスラム過激派組織が強靭化し、テロが増加した」というショッキングな出来事につながっていることがわかっています。
ひとつの事柄がいろいろな事柄につながっていて、想像を超えた事柄に影響を及ぼすこともあることを知るのは、SDGsを理解するうえで大事なのですね。
2つ目のキーワードは「全部を同時に」
先にも書いたとおり、私のゴールは経済メーターを増やすこと。最初は、なかなか経済をよくすることができなかったのですが、途中で、経済を活性化させるには、人口を増やす必要があることに気が付きました。
実は、この気づきにもSDGsの本質が隠れていたことが、ゲーム終了後の福田の解説で判明します。それは、SDGsのどれか一つの目標だけに特化して達成しようとしても、実現できない。他の目標もバランスよく達成する必要があるという、「全部を同時に」と呼ばれているものでした。
「全部を同時に」という考え方を視覚的に示したのが、「SDGsのウエディングケーキモデル」。 SDGsの目標を「経済」「社会」「環境」の3分野に分類し、ケーキのように積み上げたものです。
ケーキの頂点は目標17。その下に「経済」と「社会」の層があり、土台は「環境」です。
・「経済」は「社会」に支えられ、「社会」は「環境」に支えられている
・バランスよく目標を達成していかないと、全部崩れてしまう
というSDGsの本質を表現して、「全部を同時に」取り組むに必要がある、というのがよくわかります。
credit: Azote Images for Stockholm Resilience Centre, Stockholm University
まとめ
SDGsカードゲームをとおして「連鎖」「全部を同時に」以外にもたくさんの気づきがありました。
このゲームの舞台は、わたしたちの「まち」なので、自分事として考えることができ、実行したプロジェクトによる「まち」への影響を可視化できます。結果として楽しみながらSDGsに触れることになり、誰かから教わるのではなく、自らSDGsの本質に気が付くことができたのでしょう。
ゲームに登場したプロジェクトは、日常的に耳にするようなものばかりでしたが、すべてがSDGsのいずれかの目標達成につながっていました。SDGsというと、新しいことに取り組まないといけないと考えがちですが、日ごろに実行していることのなかにSDGsにつながるものがたくさんあるということにも気が付きました。
企業がSDGsに本気で取り組むためには、スタッフ一人ひとりがSDGsを「自分事」ととらえることが重要です。はじめの一歩をゲームからスタートするのはいかがでしょうか。
(ライター 粕谷知美)
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