
更新日時:2024/12/11
株式会社シェダルでは、企業のサステナビリティ推進支援として、コンサルティング、社員研修、社内浸透支援などを行っています。
さまざまな業種のサステナビリティ推進担当、ESG担当、SDGs担当の方などとやり取りさせていただき、日々の業務での課題感なども共有いただいております。
サステナビリティ推進部、サステナビリティ推進室とは、企業が「持続可能な経営、事業活動、会社運営」を行っていくための専門部署です。各部署と連携して、自社のサステナビリティ推進を統括していく役割があります。
企業によってサステナビリティ推進部、サステナビリティ推進室、サステナビリティ委員会、サステナビリティチームなど名称はさまざまですが、体制としては、経営に近い位置づけに置かれることが多い、重要な部署になります。
サステナビリティ推進担当の方々の業務は、カバーする範囲が広く、内容も多岐にわたり複雑です。
今回は、たくさんの業務の中から、主な7つの仕事についてピックアップして解説いたします。
<INDEX>
【サステナビリティ推進担当者の7つの仕事】
1)マテリアリティの特定 2)ESG対応 3)国際基準・認証への対応 4)ステークホルダーとの対話 5)情報開示・情報発信 6)社員教育・啓蒙活動 7)情報収集 |

1)マテリアリティの特定
最初に、サステナビリティ基本方針を決めます。サステナビリティ基本方針とは、企業が持続可能な成長、発展をしていくために、どのようにサステナビリティ推進に取り組むかを決めた原則になるものです。
何のためにサステナビリティ推進に取り組むのか、どんな未来を描くのか、ステークホルダーから何を求められているのか、現状をどのように捉えているのかなどを多角的に検討して、企業のミッションやビジョンに沿った方針を定め、言語化することが大事です。サステナビリティ推進を行うなかで戸惑ったときに立ち戻るのが、サステナビリティ基本方針になります。
サステナビリティ基本方針を策定するなかで重要なのが、マテリアリティ(重点課題)の特定です。マテリアリティ(重点課題)とは、企業が優先的に取り組むべき課題のことです。
さまざまな社会課題、環境課題に対して総合的に取り組むのではなく「自社とステークホルダーにとって重要な課題はなにか」を洗い出し、整理・絞り込みを行って、特定し、優先順位を決めていきます。
マテリアリティの特定には、ステークホルダーからの意見収集、外部環境の分析、重点課題の特定、優先順位付け、マテリアリティの確定(言語化)、社内での承認などのステップが必要になります。
環境の変化や事業の変化などにより、「マテリアリティ(重要課題) 」が変化していく可能性があるため、定期的に見直しを図れるようにしていくことも大切です。
サステナビリティ戦略の策定にともなって、具体的なアクションプランの立案、必要なリソースと体制の整備、継続的な改善を行うための仕組み作りなども、サステナビリティ推進担当者の仕事です。
2)ESG対応
持続可能な社会を築くために、企業は環境・社会・ガバナンス(ESG)への考慮が不可欠であり、その取り組みが要求されています。
サステナビリティ推進担当者は、ESGの観点から、企業の取り組みを評価・改善するという役割があります。
具体的には、企業の長期戦略や目標に照らし合わせて、ESGリスク管理、指標の選定と追跡、ESG情報の収集と分析などがあります。
例えば、E(環境)では、自社の環境方針を定めます。そのうえで、温室効果ガスの削減目標を立て、具体的な活動を決め実施していきます。
S(社会)には人権方針の策定、ダイバーシティや人材教育などが含まれます。
G(ガバナンス)には、コンプライアンスや倫理規範などが含まれます。
この部分は、まさに、有価証券報告書の「サステナビリティに関する考え方及び取組」の部分につながります。
【ワンポイント】
東京証券取引所に上場していなくても、これからはどの会社にもESG対応は必要となります。
サプライチェーンを考えれば、自ずとESG対応の重要性が理解できると思います。
例えば、東京証券取引所上場会社との取引関係があれば、Co2排出量の数値提供を求められるようになる可能性もあります。プライム市場上場の場合、事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(Scope1)、他社から共有された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出(Scope2)、Scope1,Scope2以外の間接排出(Scope3)、を求める必要性があるため、まさにScope3の値は取引先の企業からの数値がなければ求めることができない仕組みになっているのです。
サステナビリティに関する取り組みや進捗状況を積極的に共有することで、取引先の上場企業などとの信頼関係を強化し、持続可能なビジネスパートナーとしての地位を確立することになるでしょう。
3)国際基準・認証への対応
サステナビリティ推進担当者の仕事として、さまざまな国際基準や認証制度への対応もあります。国際基準に沿った情報開示は、ステークホルダーやサプライチェーンに対する透明性を向上させることができます。また、さまざまな認証を受けることは、企業の信頼性やブランディング、市場競争力の強化にもつながります。
サステナビリティ推進担当者が知っておくべき国際基準としては、代表的なものとして以下のようなものがあります。企業や業種によって、または目的に応じて、適した基準を選び対応していくことが大事です。
- TCFD
企業が気候関連の財務情報を開示するための国際的な枠組みを提供するイニシアチブ - TNFD
企業が自然関連の財務情報を開示するための国際的な枠組みを提供するイニシアチブ - TISFD
企業が不平等・社会関連の財務情報を開示するための国際的な枠組みを提供するイニシアチブ - SASB
企業が金融市場で使用される持続可能性情報を開示するための業界別のスタンダードGRI持続可能性報告のための国際的なガイドライン - GRI
持続可能性報告のための国際的なガイドライン - CDP
企業が気候変動、水資源、森林の保全に関する情報を開示するための国際的なイニシアチブ - ISO規格
ISO14001(環境マネジメントシステムに関する国際規格)、ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステムに関する国際規格)、ISO30414(人的資本に関する国際規格)、ISO26000(企業や組織が社会的責任(CSR)を実践するための国際規格)
ISO20400(持続可能な調達に関する国際規格)など、多数 - SDGs
世界各国が共同で取り組むべき17の目標と169のターゲットを定めた国際的な開発アジェンダ - SBT
Science Based Targets(科学と整合した目標設定)の略称で、SBTi(「i」は「initiative」)ともいわれます。企業は、SBTが定める認定基準を満たすように温室効果ガスの削減目標を設定し、これが認められれば、SBTの認定を受けることができます。
4)ステークホルダーとの対話
サステナビリティ推進担当者は、投資家、顧客、従業員、地域社会、政府などのステークホルダーとのコミュニケーションを取っていく役割もあります。
ステークホルダーの期待値や懸念点を把握し、改善することによって、信頼関を高めるだけではなく、製品やサービスの見直しなどにも役立ちます。
コミュニケーションの方法としては、ミーティング、インタビュー、アンケート、ワークショップなど、さまざまな方法があります。対話の目的に応じて、適したコミュニケーションの方法を選択し、対話の実施、ステークホルダーからのフィードバックの確認、企業のサステナビリティ活動の改善に役立てることも大切です。
5)情報開示・情報発信
サステナビリティ推進担当者にとって、企業のサステナビリティに関する情報開示と情報発信も、重要な仕事です。情報開示・情報発信の方法はさまざまですが、メインとなるのが次の3つです。
・統合報告書
統合報告書とは、財務情報(売り上げや利益、資産など)と、非財務情報(企業理念、ESG関連情報、人的資本、CSR、SDGsなどの取り組み)を取りまとめた報告書のことです。統合報告書は、企業の価値創造ストーリーを投資家や世間に伝えることによって、企業の評価向上や投資家の投資判断の参考にもなります。
なお、詳細なサステナビリティ情報を求められる場合や自ら積極的に開示する場合など、別途サステナビリティ・レポートやESGレポートなどを用意する場合があります。企業の戦略やステークホルダーのニーズに応じて対応しています。
参考までに、Webのサステナビリティページと、統合報告書との違いを以下の表にまとめておきます。違いを理解して、最適な情報開示・情報発信を心がけてください。
Webのサステナビリティページ | 統合報告書 | |
形式 | Web(動的) | PDF/印刷物(静的) |
更新頻度 | 随時、リアルタイム | 年に1度 |
内容 | サステナビリティに関する情報を広範囲に発信できる | 財務情報と非財務情報を統合して発信する(戦略的視点) |
対象 | 一般を含めた幅広いステークホルダー | 投資家、アナリストが中心 |
掲載情報 | 幅広い情報を、さまざまな深さ、トーンで掲載できる | 企業価値創造に関する情報を中心に、簡潔かつ集約的に掲載 |
・有価証券報告書
2023年1月31日に施行された「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正により、有価証券報告書に「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が新設され、サステナビリティ情報の開示が義務化されました。
「ガバナンス」と「リスク管理」が義務化、「戦略」と「目標と指標」に関しては、各企業が重要性を踏まえ開示を判断することになっていることもあり、各企業判断にゆだねられている「戦略」と「目標と指標」の開示状況は、あまり進んでいません。
今後、規制強化や法改正が進むと考えられることから、他社より先に、サステナビリティへの取り組みを進めるとともに、正しくわかりやすく言語化して開示していくことが重要です。
これにより、投資家・取引先・消費者・従業員などのステークホルダーからの評価を高め、ブランドイメージや企業価値を高めることが可能となるからです。
・Webサイト
Webサイトにサステナビリティページを設けて、サステナビリティに関するさまざまなコンテンツを作り、情報開示・情報発信をすることが標準化しつつあります。サステナビリティコンテンツは、投資家、顧客、従業員、地域社会、政府などのステークホルダーに対して、柔軟にさまざまな情報を伝えることができます。
【ワンポイント】
弊社は、企業のWeb(サステナビリティページ)のリニューアルに際し、情報再設計などのサポートをしていますが、多くの企業様で共通するのが「サステナビリティページの企画・設計」が不十分だということです。
目的やターゲットに合わせたカテゴライズ(区分・体系化)ができていないために、さまざまな情報が無秩序に詰め込まれ、「気がついたら、サイトがぐちゃぐちゃになってしまった」「どこに何が掲載されているのかわからない」というご相談を受けることが多いです。
Webサイト、統合報告書、有価証券報告書は、最初の「企画、設計、構成」の部分が最も重要だと思います。
6)社員教育・啓蒙活動
企業のサステナビリティ推進は、経営陣や特定の部門に限定されるものではなく、組織全体で取り組んでいくべきです。組織全体で継続的に取り組んでいくことによって、大きなインパクトを出し、企業の成長につなげることができるからです。
組織全体でサステナビリティを推進するためには、社員教育や啓蒙活動が不可欠です。社員向けの研修やセミナーを定期的に企画・実施することが大事です。また、社内コミュニケーションツールやイベントを活用して、社員がサステナビリティに対する関心を持ち続けるよう努めます。
企業のサステナビリティ方針を定着させることによって、企業文化の醸成、取り組みの浸透、イノベーションの促進、社員のモチベーションの向上、リスク軽減など、多くの効果が得られます。
「企業のサステナビリティ推進に関する実態調査(2024年版)」の結果、サステナビリティ関連部署の方が思っているほど、社内浸透していないことが明らかになっています。
7)情報収集
環境、社会、経済を中心に、あらゆる情報が、サステナビリティ推進担当者の業務に関連しています。国際基準や国内の法律、他社の取り組みや事例、日々のニュースにも敏感でなくてはなりません。
情報収集の方法としては、以下のようなものがあります。
- 各種国際機関、政府機関などの公式Webサイト
- 専門書籍
- セミナー/研修/カンファレンス
- ニュースサイト/記事
- SNSやネットワーキング
- その他
サステナビリティに関する情報は、業界や地域、企業の規模や事業内容によっても異なります。企業は、自社の状況や目標に応じて、適切な情報を収集することが大切です。
■サステナビリティ推進担当者の7つの仕事(まとめ)
いかがでしたか?
「サステナビリティ推進担当者の7つの仕事」について、概要だけでも理解していただけたでしょうか?
【サステナビリティ推進担当者の7つの仕事】
1)マテリアリティの特定
2)ESG対応
3)国際基準・認証への対応
4)ステークホルダーとの対話
5)情報開示・情報発信
6)社員教育・啓蒙活動
7)情報収集
サステナビリティ推進担当者の仕事は、戦略策定、情報発信、国際基準への対応、ステークホルダーとの関係構築、さらには社員教育までと、カバーする業務範囲が非常に広く複雑です。
多くの企業では、サステナビリティ推進部門を設置し、複数名のサステナビリティ推進担当者が特定の役割を担い、業務に専念できる体制を整えています。
サステナビリティ推進部門は、企業の社会的価値の向上と同時に、持続可能な社会の構築に向けた重要な役割を果たしているのです。
企業のサステナビリティ推進担当者441名の生の声、意見、感想を集めた調査レポートも、参考になると思います。
ぜひ、ダウンロードしてお読みください。
▼社内浸透がカギを握る! 企業のサステナビリティ推進に関する実態調査(2024年版)
https://shedar.co.jp/contact-dl-report/
最後に・・・
シェダルでは、サステナビリティ推進担当者の方をトータル的に支援する、さまざまなサービスを行っています。
・コンサルティング(サステナビリティ推進のための計画策定支援、有価証券報告書の記載レベル向上のための支援活動など)
・サステナビリティに関するコンテンツの企画・制作(活動報告・インタビュー記事・コラムなど)
・SDGs/サステナビリティに関する社員研修・ワークショップ
ぜひ、お気軽にご相談ください。
●開示に関するこちらの情報もご利用ください。
●次のコラムも、あわせてお読みください。
サステナビリティ推進部に向いている人って? 3つの特徴とは

企業のサステナ推進に関する実態調査
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