最近、「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」という言葉を耳にする機会が増えてきました。増えてきたというより、ここ数年、ビジネスの現場や行政の取り組みの中で繰り返し言われ続けているようにも思いますよね。

サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは、限りある資源を繰り返し使うことによって、廃棄物を出さずに経済を回していこうとする新しい経済のあり方です。

ヨーロッパを中心に法規制も整備され、日本でも環境省や経産省がサーキュラーエコノミー推進を強めていますが、まだ広く浸透しているとは言えません。

原因のひとつとして、特に企業活動や自治体の施策において、「再利用・リサイクル」の先にある「資源の循環」という点に課題があるのでは?と思っています。

そんなタイミングで、先日、サステナビリティ仲間、コンポスト仲間の谷口聡子さんの勉強会に参加しました。谷口さんは、大手企業のサステナビリティ推進部に自ら立候補して異動し、数年間にわたり、気候変動や資源循環に関わる環境推進業務に携わっている方です。

テーマは、「サーキュラーエコノミーとコンポスト、コミュニティガーデン」。

このコラムでは、谷口さんに許可をいただき、勉強会の一部を含めながら、サーキュラーエコノミーの基本的な考え方から、国内外の違い、そして生ごみ堆肥化やコミュニティガーデンといった具体的な実践例などをご紹介します。

項目内容
テーマサーキュラーエコノミーとコンポスト、コミュニティガーデン
開催日時2025年5月17日(土)10時~12時
発表者谷口聡子
場所東京都大田区 エセナおおた6F(スマイル大森)
内容1:サーキュラーエコノミー
2:コンポスト
3:コミュニティガーデン
4:事例紹介
主催環境研鑽集団 土9
発表者:谷口聡子さん
サーキュラーエコノミーとコンポスト、コミュニティガーデン

なぜ今、サーキュラーエコノミーなのか?

私たちの社会は、これまで「大量生産・大量消費・大量廃棄」を前提とした経済モデルで成長してきました。その結果、さまざまな問題が起こっています。

顕在化した3つの社会問題

  • 廃棄物による環境汚染
  • 気候変動
  • 天然資源の不足

デカップリングの必要性

これらの問題を解決するためには、デカップリングが不可欠です。デカップリングによって、資源の使用を「地球の再生能力の範囲」に収めながら経済成長することが求められています。「環境負荷の低い経済モデル」を意識的に作っていくことが大事です。

デカップリングとは、もともと「分離」や「切り離し」を意味する言葉です。

環境分野では、経済成長と環境負荷を切り離すことを意味します。これまでは、経済成長と資源の使用が「連動」していましたが、今後は、経済成長と資源の使用を「切り離す」ことが必要になります。つまり、「資源の使用を抑えながらの経済成長」ということになるのです。

出典:欧州環境機関 (European Environment Agency)

そこで、注目が高まっているのが、サーキュラーエコノミー(循環経済)というわけです。

サーキュラーエコノミーとは?

サーキュラーエコノミーは、循環経済と訳されます。従来の線形経済が「生産→消費→廃棄」の一方向の流れであったのに対し(リニアエコノミー)、サーキュラーエコノミーは「生産→消費→収集→再利用→生産」の循環により、廃棄物自体を発生させない仕組みを目指します。

出典:イラストAC(フリー画像)

サーキュラーエコノミーを実践する「コンポスト」と「コミュニティガーデン」

コンポストは、サーキュラーエコノミーを実現する最も身近な手段です。家庭から出る生ごみを、微生物の働きによって発酵・分解させ、植物が吸収しやすい栄養豊富な堆肥に変える仕組みです。

コンポストのメリット

個人・家庭への効果

  • 生ごみ処理の手間削減、ごみ袋代の節約
  • 作った栄養豊富な堆肥による、安全で健康的な野菜作りへの活用
  • エコ活動への気軽な参加
  • 植物を育てる喜びや達成感(暮らしに楽しみが増える)

社会・環境への効果

  • 水分を80-90%含む生ごみの焼却削減→CO2排出量減少
  • 年間2兆円を超える日本のごみ処理費用の削減
  • 化学肥料の使用削減
  • 土壌改良による炭素吸収の促進

じつは、私も、谷口さんも、LFCコンポストの認定アドバイザーとして、コンポストをひろめる活動をしています。地域活動や企業研修を通して、コンポストの素晴らしさや使い方をお伝えする取り組みを行っているのです。

コミュニティガーデンのメリット

コンポストで作った「堆肥」の活用先として注目されるのが、コミュニティガーデンです。コミュニティガーデンとは、地域住民が集まって花や野菜を栽培するオープンスペース。地域のコミュニティが中心となって、企画・運営・管理を行います。

教育、雇用、ウェルビーイング、栄養循環などの観点からも、コミュニティガーデンは、注目されていて、国内でもさまざまなコミュニティガーデンがあります。

企業として取り組みもひろまっており、次のようなメリットもあります。

  • 人的資本経営に貢献
    従業員が参加することで、エンゲージメントやチームビルディングにも効果がある
  • ESG活動としての位置づけ
    敷地内にガーデンを設置し、地域貢献や社員のウェルビーイングの促進が期待できる
  • CSR・CSVの一環
    食育や防災、環境保全に関する教育と実践の場を提供できる

コンポストやコミュニティガーデンに関する、世界の先進事例

  • 韓国
    生ごみリサイクル率95%を達成。
    2005年に生ごみの埋め立て処分を禁止し、2013年にコンポスト化を義務化。
  • フランス
    2024年から生ごみ堆肥化を義務付け。パリ市内には120のコミュニティガーデンが存在。
  • アメリカ
    カリフォルニア州、バーモント州、ニューヨーク市などで生ごみコンポスト義務化が進行中。

日本の現状と課題

日本では、資源循環に関する取り組みの多くが、助成金など単発的な支援にとどまっており、社会全体の仕組みを変えるまでには至っていません。たとえば、生ごみ堆肥化の取り組みも、補助金や一部地域での実証実験に限られています。日本の自治体のうち55%以上が、家庭用生ごみ処理機に助成金を出していますが、回収の仕組みを作ったり、近くの農園で堆肥を活用するという、サーキュラーエコノミーの実現には、至っていない現状があります。

一方、海外では、「ごみを出さない仕組み」そのものを制度として組み込むことで、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を本質的に実現しようとしています。

今後、日本でも補助金に頼るだけでなく、「廃棄物を資源として活用する社会の仕組み」そのものを設計し直すことが必要です。レジ袋有料化のように、生ごみ処理の有料化により削減意識を高めることも一つの解決策です。

いかがでしたか?

谷口さんの勉強会に参加して、サーキュラーエコノミーの必要性を強く感じ、その実践のひとつとして、コンポストをひろめる活動を、もっともっとがんばっていきたいと思いました。

【勉強会の参考Webサイト】
・エンビプロ・ホールディングス サーキュラーエコノミーへの取り組み →このページを見る
SDGsコンパス 「サーキュラーエコノミーとは?」 →このページを見る
・LFCコンポスト →このペジを見る
・循環型コミュニティガーデン協会 →このページを見る
・コミュニティガーデンとは・ 意味 | IDEAS FOR GOOD →このページを見る
・生ごみ処理機、助成金で半額購入、得られるメリット(井出留美) →このページを見る
・韓国が「食品リサイクル大国」になった理由 | ELEMINIST →このページを見る
・なぜ韓国はリサイクル先進国になれたのか? | エシカルはおいしい!! →このページを見る
・パリに学ぶ「絆」再生のためのコミュニティガーデン|環境らしんばん →このページを見る

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