【課題・背景】
・DIYの事業を通じて古くから社会課題の解決に取り組んできたが、一人ひとりの認識は薄い
・サステナビリティの重要性が社内に浸透しておらず、社員の間に温度差がある
・ 100周年を迎えてサステナビリティについての発信をしたいが、何から始めればよいのかわからない
【実施内容・導入の効果】
・サステナビリティ研修を行い、社員一人ひとりのサステナビリティへの意識が高まった
・「サステナビリティ宣言ページ」の完成により、社員に自覚や自信が芽生えた
・重点的に取り組むべきマテリアリティを、共通の認識として持てるようになった
和気産業株式会社様(以下、和気産業様)は、大正11年(1922年)創業、令和4年(2022年)に100周年を迎えた歴史のある企業です。1970年代からDIYを国内に広め、以降DIY専門商社として業界を牽引してこられました。
「人々が幸福な暮らしを送るために、生活者の立場で快適で安全な住環境を創造する」という理念を掲げ、DIYの事業を通じて、環境問題や社会問題の解決に取り組んできた和気産業様。しかし、その取り組みは各部や課ごとで行われ、会社全体の方針として一丸となって取り組むまでには至っていませんでした。
そこに危機感を覚えた鈴木加代子取締役が、グリーゼ(現シェダル)に相談。2022年12月に基礎講座、2023年4月にワークショップを実施し、サステナビリティ基本方針をまとめたページを完成させました。その経緯や効果について、同社の鈴木様、岩本様、平野様に伺いました。
鈴木加代子様
取締役
岩本由依様
EC事業部 主務
平野 俊様
大阪営業部 特販課 主務
※部署名・役職は取材当時(2024年9月)のものです
求めたのは、自社特有の課題を解決してくれるサステナビリティ研修
鈴木様:
私たちはDIYの事業を通じて、世の中の課題やお客様の困りごとをいち早くキャッチアップし、その解決のために尽力してきました。ただ、当たり前のこととして取り組んできたためか、社内で「サステナビリティ」という言葉を意識することはなく、改めて発信するといったことも行ってきませんでした。
それはホームセンター業界でも同様で、大手の企業様をのぞいてはサステナビリティページの公開なども当時は行われていませんでした。
そんな状況だったからこそ、和気産業が何か形にしなければと考えたのですが、正直何から始めればよいのか悩みました。サステナビリティ研修にもいくつか参加しましたが、自社にどのように落とし込めばよいかがわからなかったのです。
そんなとき、「いいものマガジン」というウェブマガジンの制作で長くお付き合いしてきたグリーゼ(現シェダル)さんが、サステナビリティ推進に取り組まれていることを知り、ご相談しました。他にも何社か検討したのですが、弊社をよく知っていただいていたこと、ただ講義を行うだけでなくカードゲームやワークショップなど社員が自分ごととして捉えられるような支援を行っていたことが決め手となりました。
サステナビリティ研修
~基礎講座で知識習得&ワークショップで自社分析と未来創造~
基礎講座
鈴木様:
社会課題の解決につながる取り組みを行っているものの、社員の間にはあまり実感がなかったこと、「サステナビリティ」や「SDGs」について、知識の差や温度差があったことから、まず「基礎講座」の実施を提案されました。
弊社の実情や課題を前もってヒアリングいただいたので、弊社用にカスタマイズした資料をご準備くださった点が良かったと思います。
なるべく多くの人に受講してもらいたかったのでZOOM開催とし、大阪本社だけでなく東京や福岡の事業所、物流センターの方たちに一斉に受講してもらいました。
岩本様:
基礎講座を受けて一番良かったのは、私個人としても和気産業としても、すでにサステナビリティに取り組んでいることを理解できたことですね。他社の事例もたくさん紹介してくださいましたが、弊社に関連した企業を多数あげていただいたので、わかりやすかったです。
平野様:
基礎講座を受けるまでは、正直ほとんどサステナビリティについて意識していませんでした。ただ改めて考えてみると、取引企業の多くがサステナビリティやSDGsに貢献する商品をすでに開発されていて、私は営業としてその販売に携わっていることに気づきました。知らず知らずのうちに、社会に貢献できていたのかも…と思えたのです。基礎講座を受けなければ、意識できないままだったかもしれません。
鈴木様:
基礎講座終了後、全員にアンケートをとりました。サステナビリティに関する意識の差があったものの、それぞれが何かしら気づきを得られたことは大きかったですね。
感想は、おおよそ次の4つに分けられました。
- 環境に対しての意識の低さに気づいた
- 小さなことでもよいから、とにかく取り組むことの大切さに気づいた
- 当たり前に行っていたことがサステナビリティにつながる行為だと気づけた
- サプライチェーンとして選ばれるためにもサステナビリティが重要であることがわかった
経験豊富なグリーゼ(現シェダル)さんだからこそ、社員間の意識の違いを考慮し、誰にとっても理解しやすい講座を開催してくださったのだと思います。とても意義のある講座になりました。
ワークショップ
鈴木様:
ふくださんからは、もともと「基礎講座」と「ワークショップ」をセットでご提案いただいたので、基礎講座の約4カ月後にワークショップを行いました。私自身も、社内浸透させるためには、座学だけで終わらず次のステップが必要だと考えていたので、満足しています。実施のタイミングについても、ちょうど良かったのではと思います。
業務の都合で、基礎講座を受けた人全員の参加はかないませんでしたが、ワークショップにも多くの社員が参加しました。
大阪本社、東京事業所、福岡事業所、日野物流センター(滋賀県)それぞれでグループを作り、リアル開催。東京事業所にはメイン講師の福田さん、大阪本社にはグリーゼスタッフの坂田さんにも参加いただきました。さらに、各事業所をオンラインでつなぎ、ハイブリッドで実施するという大規模なワークショップとなりました。
岩本様:
大阪事業所では2つのグループを作り、1つは平野さん、もう1つは私がリーダーとなって進めました。最初に福田さんから、このワークショップのゴールが「サステナビリティ宣言ページを作ること」だとご説明いただいたので、その心構えをもって挑むことができました。
平野様:
ワークは4つのステップで進みました。
ワーク1:仕事を通してどんな社会を作りたいか、どんな社会が作れるか
ワーク2:ワーク1を実現するためにできる取り組み(事業編)
ワーク3:ワーク1を実現するためにできる取り組み(自社編)
ワーク4:まとめ「よりよい社会を作るために」
それぞれのテーマに対し各自が意見を付箋に書き、それを模造紙に貼り付けながら話し合います。1~3まで進んだら、最後はグループごとに意見をとりまとめ発表しました。各班、同じ意見があったり、まったく違う視点からの意見があったり、興味深いなと思いましたね。
鈴木様:
私は東京事業所で参加しました。東京は若手が多く、サステナビリティへの意欲も高かったので、とても活発に意見交換が行われているなと感じました。
リーダー7名を中心に「サステナビリティ宣言」についてディスカッション
鈴木様:
「基礎講座」と「ワークショップ」終了後、当初からゴールに掲げていた「サステナビリティ宣言ページ」作りを行いました。
ここからは、ワークショップのグループリーダー7名を中心に、進めてもらいました。
平野:
ワークショップで、それぞれの班が提出した「まとめ」を元に、グリーゼ(現シェダル)さんに原稿の素案を作ってもらいました。グループリーダーは、本社、東京、福岡、日野とそれぞれ拠点が異なるため、Googleのチャット機能を使いました。素案に対し各自がコメントを書き入れていきます。基礎講座で共通の認識をもち、ワークショップでそれぞれの班の発表を聞いていたためか、コメントに対しての反対意見が出ることはなく、スムーズに進んだ印象です。
岩本:
そうですね。人のコメントを見て「うんうん、確かに」と思いながら、自分もコメントを入れていました。
そんな中、「サステナビリティ宣言ページ」には、より具体的な取り組み事例を入れたいと考え、社内で「5R(※)の取り組み」のアンケートを行いました。
全社員に依頼し、約半数から返答がきました。研修を行ったあとだったので、みなさん関心が高かったのだと思います。
※物を大切にしゴミを減らすために必要な5つのR「リフューズ・リデュース・リユース・リペア・リサイクル」
鈴木様:
社内から自主的にサステナビリティへの取り組みを深めるようなアイデアが出てアクションにつなげられたことも、今回のサステナビリティ研修の成果ではないかと思います。
グループリーダーとグリーゼ(現シェダル)さんで作り上げた「サステナビリティ宣言ページ」は、グループリーダーの一人、栗栖さんに制作してもらいました。
鈴木様:
DIYの事業を通じて、古くから社会課題の解決に取り組んできたとはいえ、社員一人ひとりの中に強い意識があったわけではありません。しかしグリーゼ(現シェダル)さんの研修を受けることで、「和気産業として、サステナビリティに取り組んでいる」ことを自覚でき、これから重点的に取り組むべきことを共通の認識として持てるようになったことは、大きな成果であったと思います。
研修を終えて見えてきた、今後の課題
鈴木様:
「サステナビリティ宣言ページ」が完成した後も発信を続けていかねばと考え、具体的な取り組みをブログにアップしました。現在、記事は4本上がっています。
岩本様:
私はEC事業部で仕事をしており、サステナビリティという言葉が生まれる前から、簡易包装を行ってきました。店頭販売の商品とは違い、商品の説明はサイトにしっかり書き込んでいるため必要がないとの理由からです。どちからというと節約の意識があったのですが、これもサステナビリティの一環であることに、基礎講座を通じて気づくことができました。
平野様:
私は入社以来、営業部の特販課で働いており、実は、サステナビリティを意識したことが正直ありませんでした。しかし研修を受けたことで、自分自身もすでにサステナブルな活動の一端を担っていたことに気づけました。先日、通販のみで販売している商品の過剰在庫について相談を受けたのですが、店舗に置いてもえるよう交渉したり、再利用先を考えたりすることも、サステナビリティにつながると考え、真剣に取り組まねばと気を引き締めたところです。
岩本様:
自分が所属する事業部内のことは知っていても、他部署のことは案外把握できていません。研修を受けた後に日野の物流センターに行き、廃棄商品の山を目にしました。物流の方には当たり前の光景だそうですが、私にとっては驚きでした。
鈴木様:
和気産業は、卸売業(営業・物流)をベースに、商品開発、小売業(通販)、子ども向けワークショップなど、多角的に事業を展開している会社です。廃棄問題一つとっても、どこか一つの部署だけで改善できるわけではなく、広い視野をもって問題解決に当たることが必要です。社員一人ひとりが、サステナビリティの大切さを常に意識し、部署の垣根を越えて自然に行動へ移せるようになる…これが、今後の課題ではないかと思います。
さらなる「サステナビリティ推進」に向けて
鈴木様:
DIYの事業を通じて、環境問題や社会問題の解決に取り組むという大きな目標を達成するには、社員一人ひとりが常に、サステナビリティ宣言で掲げた「3つの重要課題(マテリアリティ)」を意識し続けることが重要です。ただ、日々の業務に追われると、その志を持ち続けること自体難しいというのが現状です。
しかし、難しいからといって後回しにしてはいけない問題です。グリーゼ(現シェダル)さんは、企業のサステナビリティ推進について積極的に取り組んでおられるので、今後も定期的にご相談できればと思っています。社内浸透のために有効だといわれるカードゲームも含め、弊社にあった「サステナビリティ推進」にお力添えいただきたいです。
■会社概要
●社名 和気産業株式会社(英語名:Wakisangyo Co.,Ltd)
●創業 大正11年7月17日
●代表者 代表取締役社長 宮地龍
●本社 大阪府東大阪市南上小阪10-32
●事業内容 DIY用品の専門商社
●企業サイト https://www.waki-diy.co.jp/
「目標達成が順調」:25.4%
「社内浸透ができている」:22%
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