
2025年8月、東京都の八王子市にある「株式会社葵製作所」様に訪問しました。
同社は、精密板金やフレーム、溶接加工などを手がけ、顧客仕様に応じた受注生産を強みとしています。










今回は、葵製作所の長谷川社長のもとへ、同社のDX推進支援を行っている「むすびかなでる」の山﨑さんといっしょに伺いました。
いま、多くの中小企業において、業務効率化やサステナビリティ推進が重要なテーマとなっています。しかし、大規模なシステム導入や設備投資から始めるのは現実的ではありません。
葵製作所の取り組みは、現場に寄り添った「小さなデジタル化」からサステナビリティを推進する実践例として、多くの企業にヒントを与えてくれます。
葵製作所の、現場に息づく「人を大事にする経営」
葵製作所様への訪問前に、Webサイトをじっくり拝見しました。経営理念から強く感じられたのは「人を大事にする経営」です。
理念には、「お客様のご要望に寄り添い、信頼関係を創りながら、一緒になってものづくりをしていきたい」という言葉があります。さらに、仕入先や関わる人を「パートナー」と位置づけ、互いに「お陰さま」で成り立っていることを忘れない、という姿勢も示されています。
単に製品をつくるだけではなく、関わる人との絆を重んじる経営方針が、会社全体を貫いています。
実際に工場を見学させていただくと、その理念が現場に息づいていることを実感しました。
長谷川社長は社員一人ひとりに気さくに声をかけ、作業の様子や日常の出来事について言葉を交わしていました。社員との距離の近さが、安心して働ける環境をつくり、結果として良い製品づくりにつながっているんだろうな、そう感じられる場面でした。











「人を大切にする経営」が生んだ、社員発のDX推進
葵製作所のデジタル化、DX推進は、単なる効率化ではなく、「人を大切にする経営」の延長にあります。
もともと工程管理はホワイトボードと付箋で行われていましたが、「情報が共有しにくい」「更新に手間がかかる」という課題がありました。
そんなとき、長谷川社長が相談したのが、「むすびかなでる」の山﨑さんでした。「難しい仕組みを入れるのではなく、現場のやり方を活かしたまま無理なくデジタル化する」という考え方で一致したのです。
「うちの社員はITの専門家ではありません。自分たちで使いこなせることが大切」と語る社長の想いをくみ取り、山﨑さんは現場の声を丁寧にヒアリング。社員の感覚に合う仕組みを、一緒に設計していきました。
導入後、管理部の金子さんは「付箋を動かすように操作できるので、すぐに慣れました。自分たちで更新や改善を重ねるうちに、自分たちの仕組みになっていった」と話します。今では外注管理の表を自ら作るなど、社員が進んデジタル化、DX推進を担うようになりました。
長谷川社長も「社員が安心して使えることを優先した結果、社員が主体的に動くようになった」と振り返ります。
人を信じ、任せる経営が、人の力を引き出す。葵製作所のデジタル化は、「人を大切にする経営」が形になった象徴的な事例です。


中小企業が取り組むべき「小さなサステナ」とは
「サステナビリティ」というと、「脱炭素」や「再生可能エネルギー」など、大きなテーマを思い浮かべがちです。
しかし中小企業にとっては、自社の理念や強み、地域とのつながりに根ざした“小さなサステナ”から始めることが現実的で、効果的です。
弊社のセミナーでも、「まずはすぐに始められることから」とお伝えしています。たとえば・・・
- 環境:電気や水の無駄を減らす、照明のLED化
- 社会:社員の声を反映した働き方改善、地域イベントへの協力
- 経済:地元企業との取引や、適正価格での仕入れ
こうした取り組みは、すでに多くの企業が実践しています。
葵製作所の「社員を大切にする経営」や「現場が自走できるデジタル化」も、まさに「小さなサステナ」の実践例でした。
小さなサステナとは、特別なことを新しく始めるのではなく、日々の業務や価値観をサステナビリティの視点で見直すこと。
それが、持続可能な企業づくりの第一歩になるのです。

まとめ)中小企業のサステナビリティ推進は、理念に沿った1歩から!
葵製作所の訪問を通じて分かったのは、サステナビリティは特別な活動ではなく、日々の経営そのものだということです。
「お客様の想いに寄り添い、信頼関係を築く」「仕入先や社員をパートナーとして大切にする」という理念は、現場の雰囲気やDXの取り組みにも表れていました。社員が自ら改善を進める姿は、その理念が実を結んでいる証です。
中小企業にとってのサステナビリティ推進は、大きな投資から始める必要はありません。自社の理念に合った「小さなサステナ」の一歩が、採用・定着・取引先の拡大、そして未来につながる道をつくっていくのだと思いました。
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