2015年のパリ協定 では、すべての国連加盟国(197カ国・地域)が、世界の平均気温の上昇を、産業革命以前と比べ2℃よりも十分低く保ち(2℃目標)、1.5℃に抑える努力をする(1.5℃努力目標)で合意しました。
日本では、中期目標として2030年度までに26%削減(2013年度比)、長期目標として2050年カーボンニュートラル (温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする)、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しています。
出典:ESG地域金融の推進について 環境省
これに伴い、金融庁、財務省、経済産業省、環境省、国土交通省など各省庁において、さまざまな推進活動が行われています。
企業も同様に、各社さまざまなサステナビリティ推進、ESG推進の取り組みを行っていますが、適切な推進を行うためには、日本政府の動きを見極めることも重要です。
このコラムでは、最新動向をキャッチする方法と、その活用術について解説します。
今回は、金融庁編です。
金融庁のサステナビリティ推進活動の内容
金融庁の役割は、金融システムの安定性を確保し、金融市場の健全な発展を促進することです。
サステナビリティに関しては、以下のような役割を果たしています。
- 持続可能な金融システムの構築
企業の情報開示を強化し、投資家や株主が企業のESGパフォーマンスを評価できるようにしています。 - 環境に配慮した投資や融資の促進
環境に配慮した投資商品の普及を促進し、持続可能な金融商品の開発を支援しています。
金融庁は、企業がESG対応を進めるうえで、ステークホルダー(株主や投資家、取引先、従業員など)から魅力的な企業として評価されるために、さまざまなルールを策定しているのです。
金融庁が、企業にとってのスポンサーや支援者、有望な人材を見つけるためのサポートしている、と考えると、金融庁をより身近に感じられるのではないでしょうか。
金融庁のサステナビリティに関する最新動向
金融庁のサステナビリティに関する最新動向は、以下のWebサイトに集約されています。
▼金融庁の審議会・研究会等サイト
fsa.go.jp/singi/index.html
以下のような審議会などがありますので、自社に関連しそうなものをチェックしておきましょう。
- 金融審議会
- サステナブルファイナンス有識者会議
- ジャパン・コーポレート・ガバナンス・フォーラム
- スチュワードシップ・コードに関する有識者会議
- スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議
- 有価証券報告書の定時株主総会前の開示に向けた環境整備に関する連絡協議会
- カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会
- ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会
- トランジション・ファイナンス環境整備検討会
など
金融庁のサステナビリティ最新動向の活用術
例えば、「サステナビリティ情報の開示基準の導入」に関して考えてみましょう。
▼サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/base_gijiroku.html#sustainability_disclose_wg
金融庁によれば、企業のサステナビリティ情報の開示については、今後以下の方針で進めていく予定です。
・2027年3月期から、東京証券取引所プライム市場に上場する時価総額3兆円以上の企業を対象に開示が義務付けられ、最終的には、プライム市場に上場している全ての企業に開示が義務付けられる予定
・スタンダード市場、グロース市場、非上場の有価証券報告書提出企業は、義務化を待たずに任意適用を促進
出典:金融庁
上記に関わるサプライチェーンの1企業としては、どのように捉え、行動していくべきでしょうか?
例えば、上場企業A社の取引先として、B社があったとします。
A社が、GHG排出量の削減に取り組む際、サプライチェーン全体のGHG排出量を計測し、削減する必要がでてきます。その際、A社がScope3を算出するためには、取引先のGHG排出量の情報提供が必要になります。
B社が、金融庁の最新動向をキャッチアップして、他社より早く算出可能にしておけば、A社の取引先の中で、B社にアドバンテージが生まれることになります。また、算出するだけでなく、B社がCO2を独自に削減したり、上場企業A社と協力しあって新たな削減対応を行うことを提言することができれば、A社とB社は、より強固な関係を築くことができます。
逆に、B社が、金融庁の最新動向をキャッチアップできずにいた場合、GHG排出量の算出および削減対策で遅れを取ってしまいます。つまり、A社のサプライチェーンから外されてしまう危険性があるということです。
まとめ
企業規模に関わらず、金融庁の最新動向をキャッチして、今後どのようなことが求められていくのか、必要となっていくのかを読み取り、準備しておくと良いでしょう。
今後、ESGに関する規制強化や法改正が進みます。他社より先に、ESGへの取り組みを進めるとともに、正しくわかりやすく言語化して開示していくことが重要です。
これにより、投資家・取引先・消費者・従業員などのステークホルダーからの評価を高め、ブランドイメージや企業価値をより高めることが可能になるからです。
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