トランプ大統領の再選により、アメリカのESG(環境・社会・ガバナンス)対策が大きく変わる見通しです。

トランプ大統領は、もともと、ESG投資に対して批判的な立場を取っており、前回の大統領任期中にも、パリ協定を離脱しました。

今回も、気候変動対策に関する規制や、ジェンダーに関する規制など、さまざまな方針転換が行われる可能性があります。

トランプ大統領就任前から、既に、小売りのウォルマート、二輪車のハーレーダビッドソン、自動車のフォード・モーターなど米国の大手企業が次々にDEI (DE&I ) の取り組みを停滞させてきました。

2025年1月20日のトランプ大統領の就任式以降、DEI にとどまらず、さまざまな変化が予測されます。

このコラムでは、「トランプ大統領再選によるESG・サステナビリティ対策への影響」と題して、トランプ大統領就任前からのニュース記事を中心に、まとめていきます。

2025年、ESGやサステナビリティの推進に関して、推進派と撤退派の意見が対立することが予想されます。

私たちは、情報に振り回されるのではなく、正確な情報を収集し、本質を見極め、自分自身の考えを持って判断しなければならない、そういうタイミングに来ているのだと思います。

以下、情報は随時更新予定です。
最新情報をご覧になりたい方は、下までスクロールしてご覧ください。(古い順に並んでいます)

2024/12/31
バンク・オブ・アメリカとシティグループが、銀行の気候変動イニシアチブから脱退

金融世界大手米バンク・オブ・アメリカとシティグループが、銀行の気候変動イニシアチブ「Net-Zero Banking Alliance(NZBA)」から脱退。これは、ゴールドマン・サックスとウェルズ・ファーゴと続く動きである。

出典:Bloomberg

2025/1/6
米マクドナルドが「多様性目標」を廃止

米マクドナルドが、多様性確保に向けた目標を廃止することを明らかにした。米国では、職場での女性やLGBT(性的少数者)への配慮が行き過ぎではないかとの声が広がりつつあり、日系企業も対応を迫られている。 また、幹部登用の「数値目標」取り下げる方針。管理職に占める女性比率を45%、人種・性的少数者の比率を35%に引き上げることなどを掲げていたが、取りやめることを意味している。

出典:ITメディア

2025/1/20
前バイデン政権の大統領令および大統領覚書78件を撤回

トランプ大統領就任にあたり、前バイデン政権の大統領令および大統領覚書78件を撤回することを発表した。以下、78件の撤回内容から、ESG・サステナビリティ関連を抜粋する。
 
・2021 年 1 月 20 日付大統領令 13985 号 (連邦政府を通じて人種的平等とサービスが行き届いていないコミュニティへの支援を推進)。
・2021 年 1 月 20 日付大統領令 13988 号 (性自認または性的指向に基づく差別の防止および撲滅)。
・2021年1月20日の大統領令13990号(公衆衛生と環境の保護、気候危機への取り組みのための科学の回復)
・2021 年 1 月 27 日の大統領令 14008 号 (国内外の気候危機への取り組み)。
・2021年3月8日の大統領令14020号(ホワイトハウスジェンダー政策評議会の設立)。
・2021 年 3 月 8 日付大統領令 14021 号 (性的指向や性自認を含む性別に基づく差別のない教育環境の保証)。
・2021年5月7日の大統領令14027号(気候変動支援事務所の設立)。
・2021 年 5 月 20 日付大統領令 14030 号 (気候関連の金融リスク)。
・2021 年 6 月 25 日付大統領令 14035 号 (連邦労働力における多様性、公平性、包摂性、アクセシビリティ)。
・2021 年 8 月 5 日付大統領令 14037 号 (クリーンな自動車とトラックにおけるアメリカのリーダーシップの強化)。
・2021 年 9 月 13 日付大統領令 14045 号 (ヒスパニック系の人々のための教育の公平性、卓越性、経済的機会の推進に関するホワイトハウスの取り組み)。
・2021 年 10 月 11 日付大統領令 14049 号 (ネイティブ アメリカンの教育の公平性、卓越性、経済的機会の推進と部族大学および大学の強化に関するホワイト ハウスの取り組み)。
・2021 年 10 月 19 日の大統領令 14050 号 (黒人アメリカ人の教育の公平性、卓越性、経済的機会の推進に関するホワイトハウスの取り組み)。
・2021 年 12 月 8 日付大統領令 14057 号 (連邦の持続可能性を通じてクリーン エネルギー産業と雇用を促進する)。
・2022 年 3 月 15 日付大統領令 14069 号 (賃金の平等と透明性を促進することにより、連邦政府の契約における経済性、効率性、有効性を向上させる)。
・2022 年 4 月 5 日付大統領令 14070 号 (手頃な価格で質の高い医療保険へのアメリカ人のアクセスを継続的に強化)。
・2022年4月22日の大統領令14072号(国の森林、地域社会、地域経済の強化)。
・2022 年 5 月 25 日付大統領令 14074 号 (国民の信頼と安全を強化するための効果的で責任ある警察活動と刑事司法活動の推進)。
・2022 年 6 月 15 日付大統領令 14075 号 (レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア、インターセックスの人々の平等の推進)。
・2022 年 9 月 12 日付大統領令 14082 号 (2022 年インフレ抑制法のエネルギーおよびインフラ規定の実施)。
・2023 年 2 月 16 日付大統領令 14091 号 (連邦政府を通じて人種的平等とサービスが行き届いていないコミュニティへの支援をさらに推進)。
・2023年4月21日の大統領令14096号(すべての人々のための環境正義に対する国家の取り組みの再活性化)。
・2024 年 7 月 17 日付大統領令 14124 号 (ヒスパニック系教育機関を通じた教育の公平性、卓越性、経済的機会の推進に関するホワイトハウスの取り組み)。

出典:ホワイトハウス

その他の声明としては、
・「多様性」や「公平性」などを意味する政府の行き過ぎたDEIプログラムを廃止
・政府が認める性別は男性と女性の2つの性のみとする(政府機関で使用される性別に関する用語を、性自認ではなく出生時の性別に基づいた定義に戻す)
・ グリーン・ニューディール政策の終了と“EVの義務化”の撤廃など
など

2025/1/20
トランプ大統領「パリ協定」から離脱する大統領令に署名

「パリ協定」については、トランプ大統領が1期目の政権時にも離脱していた。理由としては、「アメリカの製造業を制約する不公平な協定だ」などと主張していた。その後、バイデン前政権ではパリ協定に復帰していたが、トランプ大統領が再度離脱する意向を示した。

出典:NHK

2025/1/22

・フライトは最高の従業員によって監督されるべき:ドナルド・J・トランプ大統領は、安全性と効率性よりも多様性、公平性、包括性(DEI)を優先するバイデン政権の連邦航空局(FAA)の採用方針を終了する大統領覚書に署名した。

・連邦政府の契約における極端な DEI 優遇措置を廃止し、連邦政府機関に民間部門の差別と徹底的に戦うよう指示することで、すべてのアメリカ人の公民権を保護し、個人の機会を拡大する歴史的な大統領令に署名しました。

出典:ホワイトハウス

2025/1/23

米銀大手のJPモルガン・チェースとゴールドマン・サックス・グループが、ダイバーシティー(多様性)推進策の撤回を求める動きに反発している。アクティビスト(物言う株主)から方針転換を迫られているものの、行員や顧客基盤の多様性・公平性・包摂性(DEI)を推進するプログラムに引き続き力を入れていくと表明した。
出典:bloomberg

ご参考:アメリカではありませんが、この日、タイで、同性どうしの結婚を認める法律が施行。東南アジアでは初めて、アジアでは、台湾、ネパールに続く3番目。タイではトランスジェンダーのコミュニティーが盛んであるにもかかわらず、性自認の変更を認める提案をこれまで否決してきた経緯があったそうです。

2025/1/24 フランス、EUにESG関連規制の大幅見直し求める-競争力向上訴え

フランス政府は欧州連合(EU)に対し、ESG(環境・社会・企業統治)関連のルールをはじめとする規制枠組みの大幅見直しを求めている。環境政策を撤廃し、規制緩和を進めようとする米国の新政権を念頭に、欧州の国際競争力回復を図る試みだ。
フランスの呼び掛けは、EUの「企業サステナビリティー報告指令(CSRD )」の施行時期とも重なった。CSRDは約5万社を対象に、ESGの取り組みに関連する数百のデータの報告を求める指令だ。
CSRDの修正は「急務」だと、フランス政府は同文書で指摘。CSRDは温室効果ガスの排出量をネットゼロへと欧州経済を移行させるための重要な「ツール」だとしつつ、報告要件は「大幅に緩和」されるべきで、求める基準は「気候目標」に焦点を当てるべきとしている。
ドイツも自国経済が低迷する中、CSRDの調整を呼び掛けている。欧州の二大経済大国が、EUに対し規制の見直しを求めていることになる。

出典:bloomberg
※トランプ大統領が直接の影響とは言えませんが、EUでESG関連規制の見直し機運が強まってきています

2025/1/31 2025年2月を全米黒人歴史月間

トランプ大統領は、黒人アメリカ人の貢献を称え、彼らが国の歴史を形作ってきたことを強調。フレデリック・ダグラス、ハリエット・タブマン、トーマス・ソウェル、クラレンス・トーマスといった英雄たちの功績を挙げ、彼らが法の下の平等の伝統を大きく前進させたことを称えています。また、タイガー・ウッズのような偉大な人物がそれぞれの分野で卓越性を追求し、後進に道を開いたことにも触れています。大統領は、黒人アメリカ人への感謝の気持ちを表明し、彼らがアメリカを歴史的な黄金時代へと導く上で果たした役割と、今後の貢献に期待を寄せています。そして、2025年2月を黒人歴史月間と定め、国民に様々な形でこの月間を祝うよう呼びかけています。
出典:ホワイトハウス

2025/2/1 ECBの方向性「明らか」、景気抑制的から中立的に-仏中銀総裁

欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのビルロワドガロー・フランス中銀総裁は31日、インフレ率が夏までに目標の2%へ持続的に低下する見通しで、経済成長が芳しくないことを踏まえれば、ECBが一段の緩和に向かうことは「明らか」だと述べた。
出典:Bloomberg

2025/2/3 子供たちを守るという公約を実行

※2/5追加
先週、ドナルド・J・トランプ大統領は、アメリカの子どもたちを不可逆的な化学的・外科的切除から守るための行政措置をとった。
アメリカ各地の病院で、未成年者への「ジェンダー肯定治療」(性別適合手術や投薬など)が、子供たちを傷つけ不妊にする可能性があるという主張に基づき、中止、一時停止、見直しの動きが広がっている。
・未成年者を対象としたいわゆる「性別適合治療」の予約をキャンセル開始(ニューヨーク大学ランゴーン・ヘルス)
・未成年者への性転換手術を中止すると 発表(コロラド州デンバー・ヘルス)
など
出典:ホワイトハウス

2025/2/5 USAIDでは、無駄と乱用が根深く存在する

官僚の個人的なプロジェクトに多額の資金が投入され、監視体制が整っていないためだ。セルビアの職場における多様性推進、アイルランドのDEIミュージカル、ベトナムの電気自動車、コロンビアのトランスジェンダーオペラ、ペルーのトランスジェンダー漫画、グアテマラの性転換手術とLGBT活動、エジプトの観光、テロ組織に関連する非営利団体への資金提供、武漢研究所に関与したEcoHealth Allianceへの資金提供、シリアのアルカイダ関連戦闘員への食事提供、発展途上国での個別化された避妊具の印刷、アフガニスタンのケシ栽培とヘロイン生産を支援するための灌漑運河、農業機器、肥料への資金提供など、無駄遣いの事例は枚挙にいとまがない。トランプ大統領の下で、このような無駄、詐欺、乱用は終わると主張している。
出典:ホワイトハウス
※(その後)
 アメリカのトランプ政権で政府支出の削減策を検討する組織のトップを務める実業家のイーロン・マスク氏は、海外援助を管轄する国務省傘下のUSAID=アメリカ国際開発庁について、トランプ大統領が閉鎖に同意したと明らかにしました。
 出典:NHK

※USAID(米国国際開発庁):アメリカ合衆国政府の独立機関。海外への経済援助や人道支援を目的としている。1961年に設立、世界中の発展途上国に対し、貧困削減、経済成長、民主主義の推進、人道支援などの幅広い分野で活動している。

2025/2/5 時点で、今後の気になる動向

以下についても、随時ニュースを追いかけていきますが、2月5日時点での情報として記載しておきます。

全国公共政策研究センター(NCPPR)が、アップルに対してDEI(多様性、公平性、包括性)プログラムの廃止を求める



全国公共政策研究センター(NCPPR)は、アップルに対してDEI(多様性、公平性、包括性)プログラムの廃止を求めています。NCPPRは、DEIプログラムが「訴訟、風評、財務上のリスク」につながる可能性があるというのが理由です。アップルの取締役会は、この提案に反対し、株主に反対票を投じるよう呼びかけています。2月25日に開かれるアップルの年次株主総会で、投票にかけられる予定となっています。
※NCPPR:保守系のシンクタンク。自由市場の推進を主な目的としており、企業や政府に対して政策提言を行っています。

次のコラムも、あわせてお読みください。

コラム
ダイバーシティ
日本企業のダイバーシティが進まない3つの壁とは?
Read more
コラム
金融庁編「サステナビリティ/ESG対応の鍵」最新動向とその活用術
Read more
コラム
サステナビリティ推進担当者の7つの仕事とは?
Read more

企業のサステナビリティ推進に関する実態調査
(調査レポート)ダウンロード

「目標達成が順調」:25.4% 「社内浸透ができている」:22%
セキララな実態が、明らかに!

企業でサステナビリティに関わっている方々441名を対象にアンケートを実施。数値目標の達成状況、社内浸透の状況、課題解決の方法、研修スタイルの変化なども明らかに! ぜひ、ダウンロードしてご覧ください。