トランプ大統領の再選により、アメリカのESG(環境・社会・ガバナンス)対策が大きく変わる見通しです。

トランプ大統領は、もともと、ESG投資に対して批判的な立場を取っており、前回の大統領任期中にも、パリ協定を離脱しました。

今回も、気候変動対策に関する規制や、ジェンダーに関する規制など、さまざまな方針転換が行われる可能性があります。

トランプ大統領就任前から、既に、小売りのウォルマート、二輪車のハーレーダビッドソン、自動車のフォード・モーターなど米国の大手企業が次々にDEI (DE&I ) の取り組みを停滞させてきました。

2025年1月20日のトランプ大統領の就任式以降、DEI にとどまらず、さまざまな変化が予測されます。

このコラムでは、「トランプ大統領再選によるESG・サステナビリティ対策への影響」と題して、トランプ大統領就任直前からのニュース記事を、まとめています。

2025年、ESGやサステナビリティの推進に関して、推進派と撤退派の意見が対立することが予想されます。

私たちは、情報に振り回されるのではなく、正確な情報を収集し、本質を見極め、自分自身の考えを持って判断しなければならない、そういうタイミングに来ているのだと思います。

以下、情報は随時更新予定です。
最新情報をご覧になりたい方は、下までスクロールしてご覧ください。(古い順に並んでいます)

2024/12/31
バンク・オブ・アメリカとシティグループが、銀行の気候変動イニシアチブから脱退

金融世界大手米バンク・オブ・アメリカとシティグループが、銀行の気候変動イニシアチブ「Net-Zero Banking Alliance(NZBA)」から脱退。これは、ゴールドマン・サックスとウェルズ・ファーゴと続く動きである。

出典:bloomberg

2025/1/6
米マクドナルドが「多様性目標」を廃止

米マクドナルドが、多様性確保に向けた目標を廃止することを明らかにした。米国では、職場での女性やLGBT(性的少数者)への配慮が行き過ぎではないかとの声が広がりつつあり、日系企業も対応を迫られている。 また、幹部登用の「数値目標」取り下げる方針。管理職に占める女性比率を45%、人種・性的少数者の比率を35%に引き上げることなどを掲げていたが、取りやめることを意味している。

出典:ITメディア

2025/1/20
前バイデン政権の大統領令および大統領覚書78件を撤回

トランプ大統領就任にあたり、前バイデン政権の大統領令および大統領覚書78件を撤回することを発表した。以下、78件の撤回内容から、ESG・サステナビリティ関連を抜粋する。
 
・2021 年 1 月 20 日付大統領令 13985 号 (連邦政府を通じて人種的平等とサービスが行き届いていないコミュニティへの支援を推進)。
・2021 年 1 月 20 日付大統領令 13988 号 (性自認または性的指向に基づく差別の防止および撲滅)。
・2021年1月20日の大統領令13990号(公衆衛生と環境の保護、気候危機への取り組みのための科学の回復)
・2021 年 1 月 27 日の大統領令 14008 号 (国内外の気候危機への取り組み)。
・2021年3月8日の大統領令14020号(ホワイトハウスジェンダー政策評議会の設立)。
・2021 年 3 月 8 日付大統領令 14021 号 (性的指向や性自認を含む性別に基づく差別のない教育環境の保証)。
・2021年5月7日の大統領令14027号(気候変動支援事務所の設立)。
・2021 年 5 月 20 日付大統領令 14030 号 (気候関連の金融リスク)。
・2021 年 6 月 25 日付大統領令 14035 号 (連邦労働力における多様性、公平性、包摂性、アクセシビリティ)。
・2021 年 8 月 5 日付大統領令 14037 号 (クリーンな自動車とトラックにおけるアメリカのリーダーシップの強化)。
・2021 年 9 月 13 日付大統領令 14045 号 (ヒスパニック系の人々のための教育の公平性、卓越性、経済的機会の推進に関するホワイトハウスの取り組み)。
・2021 年 10 月 11 日付大統領令 14049 号 (ネイティブ アメリカンの教育の公平性、卓越性、経済的機会の推進と部族大学および大学の強化に関するホワイト ハウスの取り組み)。
・2021 年 10 月 19 日の大統領令 14050 号 (黒人アメリカ人の教育の公平性、卓越性、経済的機会の推進に関するホワイトハウスの取り組み)。
・2021 年 12 月 8 日付大統領令 14057 号 (連邦の持続可能性を通じてクリーン エネルギー産業と雇用を促進する)。
・2022 年 3 月 15 日付大統領令 14069 号 (賃金の平等と透明性を促進することにより、連邦政府の契約における経済性、効率性、有効性を向上させる)。
・2022 年 4 月 5 日付大統領令 14070 号 (手頃な価格で質の高い医療保険へのアメリカ人のアクセスを継続的に強化)。
・2022年4月22日の大統領令14072号(国の森林、地域社会、地域経済の強化)。
・2022 年 5 月 25 日付大統領令 14074 号 (国民の信頼と安全を強化するための効果的で責任ある警察活動と刑事司法活動の推進)。
・2022 年 6 月 15 日付大統領令 14075 号 (レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア、インターセックスの人々の平等の推進)。
・2022 年 9 月 12 日付大統領令 14082 号 (2022 年インフレ抑制法のエネルギーおよびインフラ規定の実施)。
・2023 年 2 月 16 日付大統領令 14091 号 (連邦政府を通じて人種的平等とサービスが行き届いていないコミュニティへの支援をさらに推進)。
・2023年4月21日の大統領令14096号(すべての人々のための環境正義に対する国家の取り組みの再活性化)。
・2024 年 7 月 17 日付大統領令 14124 号 (ヒスパニック系教育機関を通じた教育の公平性、卓越性、経済的機会の推進に関するホワイトハウスの取り組み)。

出典:ホワイトハウス

その他の声明としては、
・「多様性」や「公平性」などを意味する政府の行き過ぎたDEIプログラムを廃止
・政府が認める性別は男性と女性の2つの性のみとする(政府機関で使用される性別に関する用語を、性自認ではなく出生時の性別に基づいた定義に戻す)
・ グリーン・ニューディール政策の終了と“EVの義務化”の撤廃など
など

2025/1/20
トランプ大統領「パリ協定」から離脱する大統領令に署名

「パリ協定」については、トランプ大統領が1期目の政権時にも離脱していた。理由としては、「アメリカの製造業を制約する不公平な協定だ」などと主張していた。その後、バイデン前政権ではパリ協定に復帰していたが、トランプ大統領が再度離脱する意向を示した。

出典:NHK

2025/1/22 連邦航空局(FAA)・連邦政府の契約に関し、EDI優遇を廃止

・フライトは最高の従業員によって監督されるべき:ドナルド・J・トランプ大統領は、安全性と効率性よりも多様性、公平性、包括性(DEI)を優先するバイデン政権の連邦航空局(FAA)の採用方針を終了する大統領覚書に署名した。

・連邦政府の契約における極端な DEI 優遇措置を廃止し、連邦政府機関に民間部門の差別と徹底的に戦うよう指示することで、すべてのアメリカ人の公民権を保護し、個人の機会を拡大する歴史的な大統領令に署名しました。

出典:ホワイトハウス

2025/1/23 JPモルガン・チェースとゴールドマン・サックス・グループ DEIプログラム継続意思

米銀大手のJPモルガン・チェースとゴールドマン・サックス・グループが、ダイバーシティー(多様性)推進策の撤回を求める動きに反発している。アクティビスト(物言う株主)から方針転換を迫られているものの、行員や顧客基盤の多様性・公平性・包摂性(DEI)を推進するプログラムに引き続き力を入れていくと表明した。
出典:bloomberg

ご参考:この日、タイで、同性どうしの結婚を認める法律が施行。東南アジアでは初めて、アジアでは、台湾、ネパールに続く3番目。タイではトランスジェンダーのコミュニティーが盛んであるにもかかわらず、性自認の変更を認める提案をこれまで否決してきた経緯があった。

2025/1/24 フランス、EUにESG関連規制の大幅見直し求める-競争力向上訴え

フランス政府は欧州連合(EU)に対し、ESG(環境・社会・企業統治)関連のルールをはじめとする規制枠組みの大幅見直しを求めている。環境政策を撤廃し、規制緩和を進めようとする米国の新政権を念頭に、欧州の国際競争力回復を図る試みだ。
フランスの呼び掛けは、EUの「企業サステナビリティー報告指令(CSRD )」の施行時期とも重なった。CSRDは約5万社を対象に、ESGの取り組みに関連する数百のデータの報告を求める指令だ。
CSRDの修正は「急務」だと、フランス政府は同文書で指摘。CSRDは温室効果ガスの排出量をネットゼロへと欧州経済を移行させるための重要な「ツール」だとしつつ、報告要件は「大幅に緩和」されるべきで、求める基準は「気候目標」に焦点を当てるべきとしている。
ドイツも自国経済が低迷する中、CSRDの調整を呼び掛けている。欧州の二大経済大国が、EUに対し規制の見直しを求めていることになる。

出典:bloomberg
※トランプ大統領が直接の影響とは言えませんが、EUでESG関連規制の見直し機運が強まってきています

2025/1/31 2025年2月を全米黒人歴史月間

トランプ大統領は、黒人アメリカ人の貢献を称え、彼らが国の歴史を形作ってきたことを強調。フレデリック・ダグラス、ハリエット・タブマン、トーマス・ソウェル、クラレンス・トーマスといった英雄たちの功績を挙げ、彼らが法の下の平等の伝統を大きく前進させたことを称えています。また、タイガー・ウッズのような偉大な人物がそれぞれの分野で卓越性を追求し、後進に道を開いたことにも触れています。大統領は、黒人アメリカ人への感謝の気持ちを表明し、彼らがアメリカを歴史的な黄金時代へと導く上で果たした役割と、今後の貢献に期待を寄せています。そして、2025年2月を黒人歴史月間と定め、国民に様々な形でこの月間を祝うよう呼びかけています。
出典:ホワイトハウス

2025/2/1 ECBの方向性「明らか」、景気抑制的から中立的に-仏中銀総裁

欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのビルロワドガロー・フランス中銀総裁は31日、インフレ率が夏までに目標の2%へ持続的に低下する見通しで、経済成長が芳しくないことを踏まえれば、ECBが一段の緩和に向かうことは「明らか」だと述べた。
出典:bloomberg

2025/2/3 子供たちを守るという公約を実行

※2/5追加
先週、ドナルド・J・トランプ大統領は、アメリカの子どもたちを不可逆的な化学的・外科的切除から守るための行政措置をとった。
アメリカ各地の病院で、未成年者への「ジェンダー肯定治療」(性別適合手術や投薬など)が、子供たちを傷つけ不妊にする可能性があるという主張に基づき、中止、一時停止、見直しの動きが広がっている。
・未成年者を対象としたいわゆる「性別適合治療」の予約をキャンセル開始(ニューヨーク大学ランゴーン・ヘルス)
・未成年者への性転換手術を中止すると 発表(コロラド州デンバー・ヘルス)
など
出典:ホワイトハウス

2025/2/5 USAIDでは、無駄と乱用が根深く存在する (2/9更新)

※USAID(米国国際開発庁):アメリカ合衆国政府の独立機関。海外への経済援助や人道支援を目的としている。1961年に設立、世界中の発展途上国に対し、貧困削減、経済成長、民主主義の推進、人道支援などの幅広い分野で活動している。

もし、USAIDが閉鎖となった場合には、世界的な大きな影響を及ぼすことになります。

主な影響
国際支援の停滞
  紛争や災害時の人道支援、貧困削減、感染症対策、環境保全、民主主義支援など、多岐にわたる国際援助が停滞する可能性があります。

経済的な影響
  発展途上国の国々の経済発展が停滞する可能性があります。


官僚の個人的なプロジェクトに多額の資金が投入され、監視体制が整っていないためだ。
セルビアの職場における多様性推進、アイルランドのDEIミュージカル、ベトナムの電気自動車、コロンビアのトランスジェンダーオペラ、ペルーのトランスジェンダー漫画、グアテマラの性転換手術とLGBT活動、エジプトの観光、テロ組織に関連する非営利団体への資金提供、武漢研究所に関与したEcoHealth Allianceへの資金提供、シリアのアルカイダ関連戦闘員への食事提供、発展途上国での個別化された避妊具の印刷、アフガニスタンのケシ栽培とヘロイン生産を支援するための灌漑運河、農業機器、肥料への資金提供など、無駄遣いの事例は枚挙にいとまがない。
トランプ大統領の下で、このような無駄、詐欺、乱用は終わると主張している。
出典:ホワイトハウス
※(その後)
 アメリカのトランプ政権で政府支出の削減策を検討する組織のトップを務める実業家のイーロン・マスク氏は、海外援助を管轄する国務省傘下のUSAID=アメリカ国際開発庁について、トランプ大統領が閉鎖に同意したと明らかにしました。
 出典:NHK

※(2025年2月8日)
米首都ワシントンの連邦地裁は7日、アメリカの対外援助を担う国際開発局(USAID)の職員2200人を有給休暇にするドナルド・トランプ米大統領の計画を、一時的に差し止めた。
大統領令は、休職の開始を米東部時間7日午後11時59分としていたが、直前にカール・ニコルズ連邦地裁判事が、労働組合による訴えに応じて「非常に限定的な」一時差し止め命令を出すと述べた。
出典:BBCニュースJAPAN
【日本への影響】
USAIDは、設立以来、世界100カ国以上で、経済成長、民主主義、人道支援、環境保護などの分野で活動を行っており、日本など同盟国によるインド太平洋戦略にも影を落とすことになります。
※インド太平洋戦略とは
アメリカ合衆国が中心となって提唱する戦略です。自由で開かれたインド太平洋地域を維持し、その地域の平和と繁栄を促進するためのもので、日本は、このインド太平洋戦略において、重要な役割を担っています。
2023年3月20日、岸田内閣総理大臣は、訪問先のインド・ニューデリーにおいて、政策スピーチを行い、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の新たなプランを発表しています。
※出典:外務省

2025/2/5 女子スポーツから男性を排除(トランスジェンダーの選手が女子競技に参加することを禁じる大統領令に署名)※2/6更新

女子スポーツは生物学的な女性のためにあるという原則を明確化し、性自認に基づく参加を認めない。
教育機関に対し、女子スポーツの機会均等を保障し、男子の女子スポーツ参加を認めないよう義務付ける。違反する教育機関への資金提供を停止する。
スポーツ団体に対し、女子スポーツの公平性と安全性を守るための政策策定を促し、国際オリンピック委員会にも同様の基準改正を求める。
入国管理において、女子スポーツ参加を目的とする男性の入国を制限する。
など。
この大統領令は、女子スポーツを生物学的な女性のためのものと定義し、トランスジェンダー女性の参加を認めないという立場を明確にしています。
出典:ホワイトハウス

2025/2/6 グーグル、多様性採用目標を廃止

米アルファベット傘下のグーグルは5日、社内文書で少数派グループからの従業員採用を増やすという目標を撤回し、「多様性、公平性、包摂性(DEI )」の取り組みの一部を見直すと通知した。
米大手ハイテク企業では、DEIに批判的なトランプ氏の大統領返り咲きを受けてフェイスブックの親会社メタ・プラットフォームズやアマゾン・ドット・コムがDEI計画の終了方針を打ち出しており、グーグルもその流れに加わることになった。
ただ、同社は「トランスジェンダー・アット・グーグル」や「ブラック・グーグラー・ネットワーク」、「障害者アライアンス」といった従業員グループは維持し、製品や企業ポリシーの決定に反映させる方針だ。
出典:ニューズウィーク日本版

2025/2/7 南アフリカ共和国の悪質な行為への対処 
※南アフリカ政府の政策に対する米国の強い反対姿勢を示すもの

南アフリカ政府が国民の権利を無視し、アフリカーナーの農地を補償なしに押収できる法律を制定したことを非難。南アフリカがこれらの不当な行為を続ける限り、米国は南アフリカへの援助や支援を停止し、人種差別から逃れるアフリカーナー難民の再定住を促進する。など。

「南アフリカ政府の人権侵害と、米国に対する攻撃的な立場を非難。南アフリカに対する援助・支援の停止。人種差別から逃れるアフリカーナー難民の再定住促進。アフリカーナーに対する人道支援の優先。」

出典:ホワイトハウス

2025/2/8 トランプ氏「プラスチックへの回帰」宣言 紙製ストロー阻止の意向

トランプ米大統領は7日、バイデン前政権がプラスチックごみ対策として推進した紙製ストローの導入を阻止する大統領令に署名する方針を明らかにし、「プラスチックへの回帰」を宣言した。「機能しない紙製ストローを求めるバイデン(前)政権のばかげた動きを終わらせる大統領令に来週署名する」と自身のソーシャルメディアに投稿した。
出典:毎日新聞

(参考)日本では、スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社が、1月から順次、店舗で提供するストローの素材を紙から植物由来のバイオマス素材「生分解性バイオポリマー Green Planet®」に切り替え

トランプ大統領とは関係なく、スターバックスコーヒージャパン株式会社では、紙ストローから植物由来のバイオマスプラスチックに切り替えていくことを、既に発表しています。
2025年1月23日(木)より、沖縄県内のスターバックス コーヒー全32店舗を先行に、3月ら順次全国拡大の予定。

新たに採用する「Green Planet®」は、石油由来の資源に頼らず、植物油などを主原料としている。現在使用しているFSC®認証紙製のストローと比べて、ライフサイクル全体で、二酸化炭素(CO2)の排出を低減し、店舗から出るストローの廃棄物量(重量比)を半分近く削減できる見込み。
また、海水中、および土壌中に生息している微生物によって、自然界でCO2と水に生分解されるため、海洋マイクロプラスチック問題などプラスチック環境汚染問題の解決に貢献。
出典:スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 プレスリリース 2024/12/6

2025/2/10  乱発されたトランプ氏の行政措置、「司法の壁」がブレーキ-、全米で訴訟

トランプ米大統領が就任し、最初の3週間が経過。
最も劇的な動きの幾つかに対し、司法がブレーキをかけている。移民や連邦職員、政府支出、トランスジェンダーの米国人を標的とする行政措置は実施が遅れそうだ。
米国際開発局(USAID )の2000人余りの職員が7日に休職扱いになるはずだったが、トランプ大統領が任命したワシントン連邦地裁のカール・ニコルズ判事が数時間前に差し止めた。
トランプ政権の行政措置に異議を申し立てた訴訟は40件余りに上る。

出典:bloomberg

2025/2/12  ゴールドマン、IPO顧客のDEI要件を撤廃-取締役に多様性求めず

これまでは新規株式公開(IPO)業務を引き受ける欧米の法人顧客は、取締役会で少なくとも2人が多様性のある人材で、そのうち1人は女性でなくてはならないという方針をゴールドマンは掲げてきた。この方針が最初に打ち出された2020年当初は、少なくとも1人が多様性のある人材であることが基準とされていた。
ゴールドマンはIPOビジネスにおける影響力を利用して、時代遅れと考える企業に変化を強制し、この推進のために顧客からの苦情さえも退けてきたが、取締役会の多様性要件に関する法務的動向に鑑み、取締役会の多様性に関する正式な方針を廃止した。
※DEI(多様性、公平性、包摂性)を米企業経済から締め出そうとする保守派の活動は、米株式取引所のナスダックにも及んだ。米連邦高裁は昨年12月、ナスダックが設けていた上場企業の多様性規定を無効化した。

出典:bloomberg

2025/2/12  ディズニーもDEIプログラム修正、ビジネス成果重視へ

米メディア・娯楽大手ウォルト・ディズニーが多様性・公平性・包摂性(DEI)推進策を修正し、ビジネス上の成果をより重視することが、ロイターが入手したメモで分かった。
ディズニーは、映画に多様な人種や性的少数者のキャラクターを起用することに反対する保守派から、批判を浴びている。
出典:ロイター

2025/2/21  シティが多様性目標を廃止、トランプ政権の圧力で「DEI」名称変更

米銀シティグループは、トランプ政権からの圧力を理由に、職場における多様性に関する目標を廃止し、多様な背景を持つ求職者との面接要件を削除する。また、「多様性・公平性・包摂性(DEI)、人材管理」チームの名称は「人材管理・エンゲージメント」に変更する。
出典:Bloomberg

2025/2/26  アップルはDEI推進継続

全国公共政策研究センター(NCPPR)は、アップルに対してDEI(多様性、公平性、包括性)プログラムの廃止を求めていました。NCPPRは、DEIプログラムが「訴訟、風評、財務上のリスク」につながる可能性があるというのが理由です。アップルの取締役会は、この提案に反対し、株主に反対票を投じるよう呼びかけていました。
※NCPPR:保守系のシンクタンク。自由市場の推進を主な目的としており、企業や政府に対して政策提言を行っています。
2月25日に開かれたアップルの年次株主総会では、この提案は否決され、DEI推進継続となりました。
参照元:Bloomberg

▼アップル
アップルのインクルージョンと多様性のページ

2025/2/27 トランプ大統領 アップルに多様性施策廃止求める

APPLE SHOULD GET RID OF DEI RULES, NOT JUST MAKE ADJUSTMENTS TO THEM. DEI WAS A HOAX THAT HAS BEEN VERY BAD FOR OUR COUNTRY. DEI IS GONE!!!
(Apple は DEI ルールを調整するだけでなく、廃止すべきです。DEI は私たちの国にとって非常に悪いデマでした。DEI はなくなりました!!!)
出典:トランプ大統領自身のSNS(Truth Social)

2025/3/13  渦中のネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA):規約変更か、1.5度以内目標削除も

アメリカの金融機関など相次いで脱退が続いている、ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)ですが、日本企業も次々と脱退している状況です。
NZBAは、金融機関が地球温暖化対策に貢献することを目的とし、投融資ポートフォリオにおける温室効果ガス排出量をネットゼロに取り組む枠組みです。

パリ協定(2015年)時点では2100年の平均気温は4℃上昇、いまのままが続くと平均値で2.7℃くらい上昇、と言われています。
以前より、良くはなっていますが、1.5℃以内に抑えることは、かなり厳しい状況です。

そんな中、大手行の相次ぐ脱退が続いている渦中のNZBAが、規約変更を行うという情報が出てきています。
NZBAは、2050年までに投融資ポートフォリオにおける温室効果ガス排出量のネットゼロを目指す、銀行による国際的なイニシアティブです。
加盟行は、投融資先の企業に対して、排出量の削減を促すとともに、持続可能な事業への移行を支援することにより、社会全体のゼロエミッション(温室効果ガスの排出をできる限りゼロにすることを目標にしている)に貢献しています。

ただ事情に詳しい関係者が匿名を条件に語ったところによると、各行への通知には規約見直し提案があり、その中には「融資案件では、産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑える目標と整合させる必要性」という部分を撤廃する案が含まれている。

出典:Reuters

気候変動対応が実体経済の現状に見合わないほど高い目標(1.5℃以内におさえる)であり、より実態に即した目標にすべきでは、ということが問われてきているのかもしれません。

2025/3/31  日本企業のネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)からの脱退状況

2025/3/4 三井住友ファイナンシャルグループ 脱退
2025/3/12 野村ホールディングス 脱退
2025/3/18 三菱UFJフィナンシャル・グループ 脱退
2025/3/25 農林中央金庫 脱退
2025/3/31 みずほフィナンシャルグループ 脱退
残り、三井住友トラストグループ1社だけ

2025/3/31 時点で、今後の気になる動向

アップルのDEI推進継続

継続となっているものの、トランプ大統領からも多様性施策廃止を求められており、今後の動向が注目されています。

米19州の共和党の司法長官が、コストコに対してDEI(多様性、公平性、包括性)プログラムの廃止を求める

【コストコ】米19州の共和党の司法長官が、コストコ・ホールセールに対して、多様性・公平性・包摂性(DEI)プログラムを撤回するよう求めている状況。1/23の株主総会では、DEIプログラムを維持することによるリスク報告の提出を求める提案が否決されていますが、アップル同様、今後の動向が注目されています。

日本への影響

日本企業では、現状、米国の反DEI等の影響を受けた日本国内での方針変更などは、発表されていないはずです(トヨタ自動車は、米国においては、DEIおよびLGBTQ支援イベントからの撤退を、2024年に発表していますが)。
グローバル企業にとっては、海外の影響を受けることになりますが、日本国内においては、静観なのでは、と思われていました。
しかし、日本企業の相次ぐNZBA脱退のニュースが流れています。株主総会時にもう少し明確になる可能性もありますが、ますます、今後の流れが気になるところです。3月決算企業が多いため、2025年3月本決算時以降の発表もしくはQA等で、何かが出てくる可能性もあり、流れをおさえておきたいところです。
また、気候変動対応が実体経済の現状に見合わないほど高い目標(1.5℃以内におさえる)であるのか?この扱いが世界的にどうなっていくのか、気になるところです。

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